いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「路地裏のあやかしたち2 綾櫛横丁加納表具店」行田尚希(メディアワークス文庫)

路地裏のあやかしたち (2) 綾櫛横丁加納表具店 (メディアワークス文庫)
路地裏のあやかしたち (2) 綾櫛横丁加納表具店 (メディアワークス文庫)

路地裏にひっそりと佇む、加納表具店。店を営むのは、若く美しい環。実は彼女、五百年以上も生きている化け狐だった。掛け軸や屏風などにこめられた思念を鎮める仕事を引き受けている彼女のもとには、様々な事情を抱えた妖怪が相談を持ち込んでくる。
ある事件をきっかけに環に弟子入りした人間の高校生・洸之介は、生意気な座敷童や、ビジネスマンのぬらりひょんといった個性的な妖怪と知り合い、やがて心を通わせていくことになる――。
人間と妖怪が織りなす、ほろ苦くも微笑ましい、どこか懐かしい不思議な物語。待望の続編が、いよいよ登場!

表具店を舞台にした、平凡な少年と気さくで人間臭い妖怪たちの日常を描いた短編連作第二弾。



2巻も良かった。
和の雰囲気と心温まるエピソードはもちろん健在。それに1巻と違って主人公・洸之介が精神的に(+口調などの描写も)安定して“いい話”に集中できる環境が整ったので、ほっこり感が増している。
また、今回はコイバナ多めだったのも嬉しいところ。中でも、二つの恋を巡る「ぬらりひょんの話」が最高。
一つは洸之介のクラスメイト・後藤さんの恋。恋の始まりのこそばゆさと、しっかり者の彼女が見せる恋する乙女な仕草がいい。洸之介の「ちょっとめんどくさい」には激しく同意。でもそこがいいのだよ。もう一つはそんな彼女を後押しする妖怪・シンの昔の恋。彼の口から語られた昔話から、当人たちでは気付けないもう一つの真実を紡ぐ環さんの言葉が温かい。
そのぬらりひょんのシンの他にも、鎌鼬や座敷童など新たな仲間が加わった。みんなどこかが凄く不器用で、でも心根は優しくて憎めない。
そんな優しい人達のあったかくなる話ばかりでホクホクで読み終わろうとしたところで、最後の最後で読後感をモヤッとさせていく洸之介。折角安定したと思ったら、お前ってやつは。でもまあ、彼の悩みが晴れないうちは話は続くってことで、好意的に受け取っておこう。
そんなわけで、洸之介の進路が決まるかもしれない次巻にも期待。