いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ゴブリンスレイヤー」蝸牛くも(GA文庫)

ゴブリンスレイヤー (GA文庫)
ゴブリンスレイヤー (GA文庫)

「俺は世界を救わない。ゴブリンを殺すだけだ」
その辺境のギルドには、ゴブリン討伐だけで銀等級(序列三位)にまで上り詰めた稀有な存在がいるという……。
冒険者になって、はじめて組んだパーティがピンチとなった女神官。それを助けた者こそ、ゴブリンスレイヤーと呼ばれる男だった。
彼は手段を選ばず、手間を惜しまずゴブリンだけを退治していく。そんな彼に振り回される女神官、感謝する受付嬢、彼を待つ幼馴染の牛飼娘。そんな中、彼の噂を聞き、森人(エルフ)の少女が依頼に現れた――。
圧倒的人気のWeb作品が、ついに書籍化! 蝸牛くも×神奈月昇が贈るダークファンタジー、開幕!


!?
コメディだと思って読み始めたらめっちゃシリアスで面食らった。タイトルではゴブリン専だと言い、あらすじはヒロインの多さが目立ち、表紙は美少女メイン。普通にコメディだと思うじゃない。
それが読んでみたら、黙々と徹底的にゴブリンをせん滅していく一人の男の生き様が描かれていた。
例えるなら、堅気の職人による職人芸を固唾を飲んで見守っている感じに近い。真面目に命のやり取りをしている話なので当然緊張感があるが、そこに職人の作り出す張りつめた空気という別の緊張感が加わって、独特の雰囲気を醸し出している。
さらに、ゴブリンの殺し方にしても逆にやられた人間の末路にしても表現がやたらと血生臭い。オークが出てくる薄い本的な展開も淡々と書くとえげつないだなって。ゴブリンの残忍性をこれでもかと濃くしつこく描写することで、ゴブリンスレイヤーの仕事に凄みを持たせているのかも。
タイトルからは想像できない緊張感とグロさがあり、この作品でしか出せない独自の色を持つ作品だった。全くの予想外のジャンルだったけど面白かった。


ただ、読んでいてどうしても気になったのがラノベ基準でも多過ぎる改行。本の下半分がマジで白い。約350頁あるのに2時間かからなかったところから考えると、普通に改行したら250〜260ページで収まる文章量だと思う。web上ではこの方が読みやすいだろうけど、書籍化するならもう少し考えていただきたい。