沖名武尊が二代目ヘルヴェノム卿となり半年。彼は家族同然の者を殺め、最愛の者と闘い、第一種怪人と殺し合いをした。すべては幼なじみである天羽ミアをガイムーンの呪縛から解き放つため、武尊は果てなき闘争を続けている。一方、正義の化身としての急速な進化に不安を感じているミアの前に、フクロウを模った仮面を被る怪人が現れ、事態は激変する――。絶対悪として君臨した少年は果たして最愛の少女を救うことができるのか。そして悪に堕ち続けた武尊の運命は――。青春ヒーローピカレスクロマン、最終巻!!
少女は大好きな少年のいる自分たちの街を守る為。少年は誰よりも大切な少女をヒーローという呪縛から解き放つ為。すれ違う幼馴染みたちの闘争、感動のフィナーレ。
やり遂げちまったよ、この主人公。
頼みのスーツは壊され自分自身は満身創痍、今まで味方だった者たちにまで刃を向けられ、【財団】には素性がバレ、そしてミアはガイムーンとしての進化が進んでいく。
序盤から一手一手丁寧に反撃の芽を摘み取られていき、じわじわ追い詰められていく武尊と唯一の味方の花音の様子に焦燥感が募っていくが、それもこれも禁断の切り札を使うことに説得力を持たせる為だったか。
武尊の決断を責める気持ちはない。けどさ、、、
大逆転劇で自分の願いを成し遂げた主人公の姿は、普通のヒーローものなら最高潮に盛り上がるところで、普通のヒーローなら賞賛の言葉をかけるところなんだろうけど、この戦いでは涙しか出てこない。武尊には「バカヤロー！」という言葉しか浮かばない。
一人の少女が救われる納得のラストだと思う反面、あまりの遣る瀬無さに、いっそのこと二人で手を取り合って逝けた方が良かったんじゃないかとすら思う。残される花音を想うと苦しいが。
「正義とは悪とは何か」「幸せとは何か」を問い続けたダークヒーローの物語。文句なしに感情を揺さぶられる素晴らしい作品だった。
