いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「神様もう一度だけ愛してると言わせて」青葉優一(メディアワークス文庫)

神様もう一度だけ愛してると言わせて (メディアワークス文庫)
神様もう一度だけ愛してると言わせて (メディアワークス文庫)

幸せな交際を経て結婚した宗一と瞳。だが入籍当日、宗一は不慮の事故により急逝し、瞳を見守るだけの幽霊のような存在となってしまう。
瞳が再び幸せを掴むことをひたすらに願う宗一だが、瞳は亡き宗一を変わらずに想い続ける。
「生前にプレゼントしたものにだけ触れることができる」という事実に気づいた宗一は、それを使って自分の願いを瞳に伝えるべく苦心する。交錯する二人の想いの行方は果たして――?

婚姻届を出したその日に交通事故で亡くなった男性が幽霊となり、最愛の女性を見守り続ける話。
本当にただそれだけだった。
自分が彼女にプレゼントしたものに触れられるという特殊な設定がありながら、これが驚くほど使われない。幽霊の彼にもやり様はいくらでもあるように思えるのに微々たる干渉しかせず、切なさを含みながらも穏やかに日々が進んでいく。
帯には「最高にせつなくて泣ける純愛ファンタジー・ストーリー」とあるけれど、初めに彼女の悲愴な姿に居た堪れなさで悲しくなるだけで、これだと泣く要素がないぞと思っていたら、最終章でやられた。
彼がその能力で彼女ともう一人に伝えた最後の言葉は、彼がどれだけ純粋に彼女の幸せを願っているか伝わってきて、素直に泣けた。それまでずっと感じていたもどかしさは、この二つのシーンの為だったのか。まったく、最後の最後まで溜めやがって……実に効果的じゃないか。
欲を言えば、第三章から最終章までの二年間の彼女ともう一人の心境の変化が綴られていればもっとドラマチックになったような気がする。でも、これは幽霊になった彼の物語だからそこは別の物語か。
はっきり言ってありがちなシチュエーションではある。でもそれに真摯に向き合って外連味なく描けば、こんなに真っ直ぐで綺麗な物語になるんだなって。