いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「雨の日も神様と相撲を」城平京(講談社タイガ)

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)
雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

「頼みがある。相撲を教えてくれないか?」神様がそう言った。
子供の頃から相撲漬けの生活を送ってきた僕が転校したド田舎。そこは何と、相撲好きのカエルの神様が崇められている村だった! 村を治める一族の娘・真夏と、喋るカエルに出会った僕は、知恵と知識を見込まれ、外来種のカエルとの相撲勝負を手助けすることに。同時に、隣村で死体が発見され、もつれ合った事件は思わぬ方向へ!?

両親の事故死によって叔父に引き取られることになった少年・逢沢文季。叔父の住む村は古風な相撲が盛んでカエルを神と崇める奇妙な風習の村だった。



な、なんだこれは。
奇妙な村の風習を紐解く伝奇小説のようであり、カエルと普通に会話するファンタジーのようでもあり、小さい体で強者を倒そうと努力する相撲はスポ根であり、村長のお嬢さんの振る舞いだけならニヤニヤ出来るラブコメで、おまけに殺人事件まで付いてくる。殺人事件が、主人公が刑事である叔父さんとその義父と会話する為だけの存在ってありか? こんな贅沢な殺人事件の使い方見たことない。
そんな一見無秩序な物語を一つに纏めているのが主人公の文季。
よく言えば頭の良い、悪く言えば理屈っぽい少年で、相撲と民俗学とカエルの薀蓄小説かと思うくらいの知識を随所で披露。そして、その知識を元に現状を自分の常識と照らし合わせたり、問題解決の糸口を探したりする。その思考を読むのが面白い。
なんだか、とてもスケールの大きい物語を読んだ気もするし、ラノベ的な軽い話を読んだ気もする不思議な感覚。とりあえず面白かったのだけは確か。
理詰め主人公の好き嫌いで楽しめるかどうかが鍵になりそうだけど、そこさえ問題なければ他にはない不思議ワールドに旅立てる、楽しい読書時間になること請け合い。