いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「暗極の星に道を問え」エドワード・スミス(電撃文庫)

暗極の星に道を問え (電撃文庫)
暗極の星に道を問え (電撃文庫)

人々の期待を背負って、強大なる魔王を討ち果たした少年トウカは、勇者として華々しく国に凱旋した。しかし、彼に報いるべき王家は非情にも裏切り、少年の命を奪い取ってしまう。
この日、ひとりの勇者が死んだ。
宇宙に漂う巨大な竜骸で形成された惑星。そこに生まれ、数奇なる運命に導かれる、かつて勇者と呼ばれた少年の物語。復讐の刃とともに厳しく荒れ果てた地を彷徨う彼の行く手に、希望という名の光明は差すのだろうか?
いま、禁断の叙事詩が紐解かれる――。

魔王討伐後王族に殺されかけた勇者が復讐を誓うダークファンタジー
ライトノベルには魔王を倒した後の勇者をテーマにした作品は数多く存在するが(魔王勇者が流行っていた数年前は特に)、コメディタッチのもの、そこまで明るくなくても深刻にならないものが多い印象がある。
その中で本作は「大事を成し遂げた勇者は、統治する王族にとって邪魔な存在にしかならない」という考え方と、作中の神話によってそれ以上の理由を与え、勇者の尊厳をとことん踏みにじる100%シリアスな物語となっている。
中でも魔族を害する人間たちをどこまでも卑劣に描くことで、元勇者の復讐心を強烈に煽り、世界観に厳しさを印象付けることに成功していて、厳かでダークな雰囲気を醸し出しているのが最大の魅力。今まで劣等種族だと教えられてきた者たちとの新たな関係や恋愛模様、復讐の鬼と化す戦闘シーンも、過剰に演出せず切なく暗い雰囲気を壊すことなく地に足の着いた物語になっているのも好印象。
と、表紙とあらすじで想像した内容の内、7,8割期待通りだったのだけど、ある一点がどうしても気に入らない。
それがキャラクターたちの口調が変に現代風で異様に軽いこと。そこだけ完全に浮いていて折角の厳かな雰囲気が台無し。今時の言葉を地の文に入れる分には分かりやすく為だと理解できるが、台詞に入れるのはNGだ。王女がイケメンと言った時は本気で萎えた。
ストーリーも世界観も良いので続きを読みたいと思う……台詞をもう少し堅くしてくれたのなら。