いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「月とライカと吸血姫2」牧野圭祐(ガガガ文庫)

月とライカと吸血姫 (2) (ガガガ文庫)
月とライカと吸血姫 2 (ガガガ文庫)

ノスフェラトゥ計画』の一件を評価されたレフは、実験体の吸血鬼イリナを監視する任務から解かれ、晴れて宇宙飛行士候補生に復帰。「人類史上初の宇宙飛行士」の座をかけた選抜試験に挑み、ライバル達と鎬を削る。一方、イリナに不穏な空気が忍び寄る。「実験体は用済みだろう。廃棄処分を」。昼と夜、すれ違うふたりの運命は。――宇宙開発の黎明期であり、最前線。様々な思惑に翻弄されながらも、命懸けで遙か宇宙を志すふたりがいた。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティ第二幕。

宇宙からの帰還後に観察対象となるイリナと、候補生に戻り再び宇宙を目指すことになるレフ。離れ離れになってしまった二人の様子が描かれるシリーズ第2弾。
1巻の終わりが綺麗だったので蛇足にならないか心配していたのだけど杞憂だった。正統派なボーイミーツガールだもの、女の子が頑張ったあとは男の子も頑張らないとね。
自身の周りの不穏な動きに気付きながらも待つことしかできないイリナと、彼女の身を案じつつ宇宙飛行士になる競争に勝つべく自分のことで手一杯なレフ。お互いの存在や小さな約束を心の支えにして耐える/努力する姿に嬉しくなるが、互いに相手の自分への感情を低く見積もっているのがもどかしい。久々の逢瀬に甘く切ない気持ちになるが、離れ離れなことに対する不安は冷戦時代のソ○エト(に似た国)の体制によって大きく増幅される。など、緩急のついた心理描写が丁寧でグッと引き込まれた。それぞれの視点で描かれる二人の揺れる心に、青春恋愛小説の醍醐味が詰まっていた。
それに宇宙への憧れというロマンと、二人以外のキャラクターとの人間ドラマ、この時代を舞台にしたら切っても切り離せない政治の問題など、メイン以外のところも短いながらもしっかりしてるのが良い。そういう土台がある上での二人の物語だから感動があるのだろう。
ラストは緩急を付けてきたストーリーの中で、最も落としたころから最高潮まで引き上げる綺麗でハッピーなエンドで読後感も最高。やっぱりこの作品、好きだ。


あとがき後にまさかの第二部の予告が。次は連合王国(アメ○カ)側の物語。銀髪お姉さんとか、、、最高じゃないか!