いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「つれづれ、北野坂探偵舎 物語に祝福された怪物」河野裕(角川文庫)

天才作家・朽木続こと雨坂が“幽霊の世界”に取り込まれ2年。雨坂の半生は世間の同情を引き、彼の本はベストセラーになっていた。一方佐々波は、異世界で新作を書き続ける雨坂から原稿を奪い取る方法を模索する。そんな中、雨坂のデビュー作に映画化の話が持ち上がり―。理想の小説を書きたいだけの作家と、本にしたいだけの編集者が辿り着いた理想郷とは?ひたすら純粋に才能と小説を追い求める物語、感動のシリーズ完結。


読み終わった時の率直な感想は「結局何だったんだろう」。
半分くらいはこの世の話ではなかったのもあるのか、これまで以上にふわふわしていて掴みどころのない物語だった。
そもそも、これは物語だったんだろうか。「天才とは何か」「完全な小説とは何か」「小説家とは何か」を、人を変え状況/立場を変え、延々と論議していただけのように思える。
言い方を変えた似たような論議の内には、言葉の使い方による印象の違いが実感できたり、言葉遊び的な部分もあったりで、そこは読んでいて面白かったので楽しい読書時間ではあった。でも、これを「物語、感動のフィナーレ」と言われると納得しかねる。終わった実感はないし、謎のまま残ったものがいくつもあるし。
あと印象に残ったのが、叱られたい人の多さ。
これだけ叱られたい人を出した後に、「作者そのまんまじゃない小説なんてない」なんて台詞を言わせるということは、河野先生……Mだな(結論がおかしい
これで終わりか。シリーズ前半は安楽椅子探偵ものの楽しさがあったけど、後半は作者の思考実験を読んでいるようだった。作者の文章は好きだけど、物語としてはちょっと好みに合わなかったかな。