いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「春、ひとり暮らし。隣に住むのはお姉さん。」森川絵夢(宝島社文庫)

両親の海外赴任でひとり暮らしを始めることになった黒塚誠一郎。引っ越したマンションの五階には、秋田すずと野花茜、二人のお姉さんが住んでいた。手料理をおすそ分けされたり、一緒にごはんを食べたり……。新生活には新しいドキドキが詰まっていた。人目を引く容姿なのに自信がない誠一郎だったが、茜に読者モデルのバイトに誘われたことで、少しずつ自分を変えていく。かわいい系男子とお姉さんのラブストーリー!

第6回ネット小説大賞受賞作。


低身長なこと以外はハイスペックな主人公が幸運と幸せを享受する、大変羨ましくけしからん、非モテ男子の怨嗟の声が聞こえてきそうな話。ちくしょー!
という半分冗談はさておいて、
お姉さんと言っても一つ違いの大学生で年の差を感じることはなく、紡がれるのは生活圏内の日常風景と、18歳前後の若者の等身大の恋愛模様が描かれる作品になっている。また、本命のすずが乙女チックな思考の持ち主で、彼女の視点の時には、少女漫画の空気になるのが特徴。
自分に自身のない主人公・黒塚くんが、好きな人のために積極的に行動するまでになる成長過程に、そんな彼にどんどん惹かれていくすずの様子など、変化をじっくり味わえるのが良いところ。
それと、二人を見守る茜(もう一人のお隣さん)の視点が面白い。特に後半呆れ気味な視点になるところが。あれを間近で見てたら「さっさとくっつけや!」と思うよねw
ただこの話、ほとんど障害がなく平穏無事のままゴールインするので、もう少しストーリーに起伏があってもいいかな、とは思う。序盤から黒塚くんへの好意全開だったのに見向きもされない可哀想なクラスメイトとか、後半に一瞬出てくる先輩や弟の男性陣とか、障害に使えそうなキャラは何人も居たんだけどな。
それでも、丁寧な恋愛模様で甘さも十分、ニヤニヤ度の高い楽しい読書時間でした。