いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「妖怪解析官・神代宇路子の追跡 人魚は嘘を云うものだ」峰守ひろかず(メディアワークス文庫)

鷹橋川で発見されたミイラ化した遺体の上半身と、それに合致する巨大な魚の下半身。
怪事件に悩まされていた新米刑事の御堂陸は、手がかりを求め、美貌の科学者・神代宇路子の許へ押しかけることに。私生活はちょっぴりだらしないが、妖怪、特に人魚について語り出すと止まらない彼女は、陸が追う事件についても何か知っている様子で──。
生真面目な刑事と妖艶な解析官が人魚の秘密を解き明かす! ……ただし、人魚は嘘をつくことがあるのでご注意を。


濃ゆい妖怪薀蓄と真っ直ぐな主人公、安心安定の峰守先生クオリティでした。良き哉。
但し元気で明るい印象のものが多い過去作と違って本作はダークな雰囲気。
舞台は一部の権力者の権威が強く、警察は腐敗していて、不穏で息が詰まりそうな地方都市、豆井戸市。そこで走り回る主人公は歴代の峰守作品主人公の中でも、最も正義感が強くて最も融通の利かない性格な新米刑事。町の空気と彼の眩しさの対比で黒いものがより黒く見える、そんなサスペンス色の強い作品。
そこに出てくる主人公の相方が、その雰囲気にぴったりなミステリアスな女性、神代宇路子。秘密の多い彼女と共に、第一の事件で遺体が見つかる人魚の謎を追いながら、女子高生失踪事件や連続放火事件など、刑事もの(と言っていいかは微妙だが)らしい事件の解決していく。
その事件解決後に残る疑惑や疑念や宇路子の秘密が複雑に絡み合いながら、一つの解へ繋がっていく道筋が巧み。最後にすべてのピースが綺麗にはまっていく気持ちよさといったら。
これはシリーズものなのかな? 出来れば続きが読みたいが。
豆井戸市は風通しがよくなって、宇路子のミステリアスさは減って、今回のようなダークさは出ないだろうけど、基本民俗学な妖怪を科学的な視点で見るのが新鮮で、女ヒーローと男助手な宇路子と陸の関係性は面白く、それにデレたら絶対可愛くなるでしょう、宇路子さん。それが読みたい。