いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「悪魔の孤独と水銀糖の少女 II」紅玉いづき(電撃文庫)

呪われた島から旅立ち、逃亡の日々を送ることになった孤独の悪魔を背負う男ヨクサルと死霊術師の孫娘シュガーリア。
世界から失われつつある異端を救う道行きの中で、彼らは人ならざる有翼種の血を引く子供、ビーノと出会う。
「俺達のことは、信じなくてもいい」
「あなたは生かすわ……なんとしても」
帝国の謀略が蠢く砂漠の街、バフハに潜入した彼らに追っ手が迫る中、ヨクサルは自分の罪と過去に直面する。
「お前を殺すのは──僕の役目だよ、ヨクサル」
孤独と幻想のあわいで、シュガーリアの身を焦がしたのは、初めての恋の激情だった。


帝国の追手からの逃避行であり、帝国への復讐の旅であり、帝国に異端とされた同胞に救済の手を差しのべる旅でもある、シュガーリカとヨクサルの旅路を描くシリーズ第2弾。
色々な意味で予想外の続編。
御伽噺のような幻想的な雰囲気と、奪う者と奪われる者に宗教弾圧にと世の中の現実を突きつけてくる厳しさを併せ持つ独特な世界観は、島を出ても変わらず。
それに今回は逃避行とあって、ごろつきやら海・盗賊やら裏社会の人間ばかりに会うのだけど、その中でされるシュガーリカとヨクサルの甘く優しいやり取りが際立っている。この厳しくも優しくて、泣きたくなる紅玉作品の作風が大好きだ。
その厳しさと優しさの対比の象徴だったのが、砂漠で拾った少年ビーノ。
死にかけていた奴隷少年が、二人の優しさによって救われていく様子に心が洗われる。しかし、そのビーノが一転……。本物の優しさとは何か。本物の強さとは何か。本当の自分が最も大事なものを自覚する大切さ。色々なことを考えさせられる物語だった。
……と、真面目に締めるつもりだったのに、このエピローグは何事!?
突然の甘ーいラストシーンに顔のニヤけが抑えられない。これじゃあお砂糖ちゃん呼ばわりに文句は言えないな。
続くとも終わるとも言えないラストだが、二度あることは三度ある?