いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー」編:S-Fマガジン編集部(ハヤカワ文庫JA)

百合――女性間の関係性を扱った創作ジャンル。創刊以来初の3刷となったSFマガジン百合特集の宮澤伊織・森田季節・草野原々・伴名練・今井哲也による掲載作に加え、〈ソ連百合〉として話題の南木義隆「月と怪物」、新鋭女性作家の共作「海の双翼」、『元年春之祭』の陸秋槎が挑む言語SF「色のない緑」、そして『天冥の標』を完結させた小川一水が描く新作宇宙SFの全9作を収める、世界初の百合SFアンソロジー


思ってたのと大分違った。
自分の中の百合の定義が狭いのか、SFの定義が狭いのか、百合とSFの間にorが入ったアンソロジーという印象。
SFって当然「少し不思議」じゃなくて「サイエンスフィクション」の方ですよね? ラノベレーベルじゃなくてハヤカワ文庫さんだし。なのに幽世とか妖怪とかオカルト系の話が半分を占めているのはなぜだろう。台詞の単語が理系なだけで、ただのグロテスクホラーだったのもあるし。「百合SF」の響きから想像していた形で出てきたのは、最後の「ツイスター・サイクロン・ランナウェイ」くらい。
でも、百合作品は百合作品、SF作品はSF作品として読めば面白い作品がいくつもある。
百合作品として最もお気に入りなのは
女学院の独特な空気のなかで、少女の儚さと死妖という存在の怪しさと姉妹愛で濃厚な百合の雰囲気を醸し出していた「彼岸花」――吸血鬼の話でSF感ゼロだけど。
SFとして面白かったのは、
次々とAIに仕事を取って代わられている近い未来を描いた社会派なSF「色のない緑」――女性三人の話ってだけで、百合感ゼロだけど。
アンソロジー作品なので、合う合わないは絶対あるとは思っていたが、根本的な定義が合っていなかったのは予想外。でも出会えてよかったと思える作品があったし、それで良しってことで。