いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「君と漕ぐ2 ―ながとろ高校カヌー部―」武田綾乃(新潮文庫nex)

インハイ出場を決めた希衣と恵梨香の新ペア。カヌー部女子四人は休む間もなく練習を重ね、結束を深める。次の関東大会では、絶対的な強さの“孤高の女王”こと利根蘭子をはじめ、千葉からは繊細なパドル捌きで魅せる双子の大森姉妹、山梨からはパワーが武器の神田と堀ペアなど個性的なライバルらが集結。ながとろ高校の勝利の行方は!? 揺れる想いと熱い闘志がきらめく青春部活小説。


女子4人だけのながとろ高校カヌー部の活躍を描く青春小説、第2弾。
新たな展開が始まると言うよりは、登場人物の紹介の続きだったり、主要人物の立ち位置を明確にしたり、1巻2巻で前後編という印象。中でも長瀞カヌー部員4人の悩み、主に先輩二人の抱えるものをはっきりさせた巻だった。
相変わらず女子高生のセンシティブで言葉にしにくい感情を表現するのが本当に上手い。
親友にして憧れの存在、千帆の復活を諦めきれないばかりに、親友にどう接していいか分からなくなっているのと同時に、目の前にいる現在の天才は羨望と僅かな妬みの対象なのに、不安定で放っておけない後輩でもある恵梨香への複雑な想い。過去の天才と現在の天才の間で揺れ動く希衣の心情。
もう伸びしろがないのに、周りの目とそれに応えられない自分の不甲斐なさに苦しむという形で「過去の栄光」に縛られている上に、大人たちのいざこざで家庭内の空気も悪く、常に何処でも息苦しさを感じている千帆。
苦しくて抜け出したいのに、自分だけではどうにもならないままならさが十二分に伝わってきて胸が苦しい。他校の生徒の良好な人間関係を見せつけられて、さらに傷つく二人の痛々しさと言ったら。やっと一つ上手くいったと思ったら、横槍が入りそうなエピローグだし……。
競技としては、対人関係で一つ吹っ切れて、負ける悔しさを覚えた恵理那の成長が気になるところだけど、その前にまずは舞奈かな。今回さらに影薄かったし。彼女がペアを組んだりフォアが出来るようになったりした時の、人間関係の変化が気になる。
というわけで舞奈さん、早く乗れるようになるんだ。