いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ここは書物平坂 黄泉の花咲く本屋さん」新井輝(富士見L文庫)

あの世とこの世の狭間で、鬼の店長が営む奇妙な店「書物平坂」。上司からパワハラを受け人生に絶望した奈美は、この「書物平坂」へ辿り着き、昔大事にしていた一冊に再会。夜通し読書に没頭することで元気を取り戻すと、今度は鬼の店長に店番を頼まれてしまう。
怪しい客ばかりで一筋縄ではいかないものの、奈美は持ち前の楽観的な人柄で乗り切ろうとするが……? (店長のプロポーズにも気づいてあげてほしいけど!?)
さて今日も、鬼のイケメン店長に引きこもりの童子も手伝って、地獄の本屋さん開店です!


上司の理不尽なパワハラに生気を失くしていた主人公・奈美が、迷い込んだ古書店で出会った一冊の本をきっかけに元気を取り戻すだけでなく、その店に住み込みで深夜のバイトまで始めちゃう話。

普通だった……。
楽天家の女主人公、本にまつわる物語、あやかし、女子力系男子、そして新井輝ワールド。好きな要素テンコ盛りじゃないか!とオープニングで大いに盛り上がったのに。
私が新井輝作品を好んで読むのは、丁度いい温さと気だるさ、不安になるような心地いいような地に足がついていないふわふわする感覚、そんな作者の持つ独特の空気感を味わいたいというのが一番の理由。その点本作は、楽天家主人公+あの世とこの世の狭間という設定で、その空気感が増す・・・かと思いきや、逆に薄れた。なぜだろう。主人公の会社の事情がリアルだったからか?
キャラクターは好みだったし、ストーリーは人が元気になっていくいい話。「書物平坂」の店内、奈美・店長・ツヅリの三人が醸し出すほんわか温かい空気は大変心地よかった。ただ、欲しかったのはそれじゃない。
初めに期待値とテンションを上げ過ぎた所為で、ネガティブな感想になってしまった。申し訳ない。