いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「魔弾の王と聖泉の双紋剣」瀬尾つかさ(ダッシュエックス文庫)

ライトメリッツ公国の戦姫・エレンの下で働く弓使いの青年・ティグルと、エレンの副官・リム。故あって二人はいま、ジスタートに突如攻め入ってきた敵国・アスヴァールの真っ只中で孤立していた。
そこで二人は、アスヴァール王女ギネヴィアから、信じられない話を聞かされる。三百年も昔の人間であるはずのアスヴァール建国者・アルトリウスが蘇り、瞬く間に国を掌握してしまったというのだ。
ギネヴィアに協力することになった二人だったが、その前に、ティグルを上回る弓の力を持ち、そしてティグルのことを「今代の王」と呼ぶ謎の男が立ちはだかり――。
魔弾の王VS魔弾の王。異国の地で、かつてない戦いがティグルとリムに迫る。


リムことエレンの腹心リムアリーシャをヒロインに据え、筆者に瀬尾つかさ先生を迎えた、『魔弾の王と凍漣の雪姫』に続く『魔弾の王』シリーズ第二のifの物語。
舞台は『凍漣』の3,4巻と同じ東の敵国アスヴァール。飛竜に囚われアスヴァールまで連れ去られてきたティグルとリムが、行きついた村に匿われていた王女ギネヴィアと出会うところから物語が始まる。アスヴァールの建国の伝記に出てくる過去の英雄が、何らかの理由で現世に復活し国を盗ろうとしているのを、王家の最後の生き残りギネヴィアを擁立して対抗する。
相手をただの敵国の人間でなく過去の英雄にし、リムにも神器(竜具ではない)を持たせと、本家よりキャラクターメインになった『凍漣』よりさらにキャラクター要素を強くしている印象。
また、戦乱の世の人と人との争いと同時進行で魔物との戦いが入ってくるのが、このシリーズの魅力の一つであるが、本作は人・魔物・死人の三つ巴の構図になっているところが面白い。
今後はアスヴァールの戦いの行く末、死者を復活させている者とその目的は? 他の魔物の動きは?など、ストーリーは当然気になるところだが、戦記ではなくキャラクター小説になっているので、やっぱり見どころはキャラクターか。
ティグルの成長はもちろんだが、エレンやティグルに対するリムの劣等感を濃く扱っているので、ヒロインの成長も楽しみ。それとデレていく過程も。