いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「声優ラジオのウラオモテ#01 夕陽とやすみは隠しきれない?」二月公(電撃文庫)

「夕陽と~」「やすみの! せーのっ!」 「「コーコーセーラジオ~!」」
偶然にも同じ高校に通う仲良し声優コンビ、夕暮夕陽と歌種やすみが教室の空気をそのままお届けしちゃう、ほんわかラジオ番組がスタート!
「あーあ、何であんたみたいな根暗女と」
「うるさいお猿さんね。私だって嫌よ」
――でも、パーソナリティふたりの素顔は、アイドル声優とは真逆も真逆、相性最悪なギャル×根暗地味子で……!?
オモテは仲良し、ウラでは修羅場、収録が終われば罵倒の嵐! こんなやつとコンビなんて絶対無理、でもオンエアは待ってくれない……! プロ根性で世界をダマせ! 第26回電撃小説大賞、堂々《大賞》受賞の青春声優エンタテインメント、NOW ON AIR!!


ありそうでなかった声優ラジオをメインテーマにしたライトノベル。しかも電撃小説大賞《大賞》受賞作には珍しい現代劇。
ラノベと声優ラジオ。同じ二次元系サブカルとして相性は良さそうなのにあまり見かけないのは、同じアニメ好きでもそこから声優を目指す陽の者と、ワナビになる陰の者の間には厚い壁があるからだろうか。
それはともかく、
このタイトルとあらすじで、どんな性悪が出てくるのかと半分恐々半分ワクワクしていたら、めっちゃいい子たちじゃないか。主人公の売れない声優・やすみは 苦労人で姉御肌で面倒見が良すぎるくらいだし、相方の夕陽はコミュ障らしくツンケンしているけど根はいい子だし。それに、二人とも自分の仕事に対する真摯な姿勢とプロとしてのプライドをしっかりもっているのがいいところ。どんなに裏表のギャップがあっても、こんな裏の顔を見せられたら応援したくなる。
しかし、そんな風に二人がいい子だった分の反動なのか、ファンがマジでキモい。同じファンが忌避するキモオタのテンプレみたいな。話をドラマチックにする必要悪だったのは分かるけど、ここまで犯罪者まがいのクズにする必要があったかどうかには疑問が残る。まあ、展開の持っていき方が上手くなかったり、キャラ造形の出来不出来が激しいのは、新人賞だから仕方がないか。
口ではいがみ合いながらもお互いを認め合い、相手が困っていれば手を差しのべる姿に、スポ根に通じるいいライバル感が出ていて、とても面白い青春小説だった。開始当初のキャピキャピしたラジオは聞く気がしないけれど、二人が本性を現してからのラジオは是非とも聞いてみたい。