いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「おいしいベランダ。 8番線ホームのベンチとサイダー」竹岡葉月(富士見L文庫)

大学生の栗坂まもりと、お隣に住む亜潟葉二は恋人から婚約者に! 葉二からのプロポーズを受け入れ、卒業後はまもりも神戸で暮らすと決めたのだ。
次は結婚挨拶にお互いの実家へ。さっそく栗坂家を訪ねて、年末には亜潟家へ向かう……って、行動が早いですね葉二さん!
同時に、まもりは二人の暮らしと目指す仕事の両方を叶えるため、関西で再び就職活動に挑むことに。
神戸のおいしい食材と料理で、気合いは充分――と思いきや、亜潟家での結婚挨拶にも、就活戦線にも異状が発生!?


挨拶回りと引っ越しとまもりの就活in関西で大忙しのシリーズ第8弾。
亜潟さんちの父母、おまけに兄も初登場。
亜潟家は思い切りとか自分で動かないと居られないところとか「ああ、これは葉二の家族だな」って感じだった。両親が教師で堅い家庭になりそうなのに、こんな愉快になるのはズルい。しかし、どこにいってもスルッと相手の懐に入り込んで、相手に気を使わせないまもりのコミュニケーション能力は尊敬する。そういえばこれで亜潟家コンプリート?
まあそんなことよりも、神戸編ですよ。
これは……就職氷河期の就活かな? 氷河期経験者には心に来るものがあって、疲弊していくまもりが見ていられない。仕事が忙しい中でも時々出てくる葉二の存在が、まもりだけでなく読者にもオアシス。
というか葉二さん、すっかりネタキャラ化してしまって。新しい会社では最早珍獣扱いじゃないですか。女性社員の「とっとと結婚しちまえ」の捨て台詞と葉二のピントのズレた返しにめっちゃ笑った。
他に神戸編でよかったのは初日、引っ越してきた日。
すき焼きで感じる東西の食文化が話の軸だったと思うのだけど、好きなのは神戸での初買い物。食品(ラインナップ・値段)の東西の差を知るためにスーパーを巡ったり、園芸店を見つけてはしゃいだり、所帯染みていてこの二人らしいお買い物風景がなんとも微笑ましい。あおりを受けた勇魚さん、お疲れ様でしたw
後半しんどかったけど、その前は楽しく面白かったし、まもりが頑張って笑顔で終われるラストにこぎつけてくれたしで、満足な一冊になった。
次回はまもり卒業編(予定)。これは新生活まで行ってくれそうな気配?