「アンチも編集者も俺以外の売れっ子も全員爆発しろ!」作家としてブレイクし、愛する人と結婚し、父親となっても、人は(特に作家は)そう簡単に聖人君子のように生まれ変わったりはしない。羽島伊月は今日も荒ぶりながら小説を書く。そんな彼を生温かく見つめる妹の千尋も、報われない片想いにいい加減疲れていて――。伊月、千尋、京、春斗、那由多、アシュリー、海津、蚕、刹那、撫子……時を経て大きく変わったり変わらなかったりする主人公達が、それぞれに掴む未来とは!? 青春ラブコメ群像劇の到達点、堂々完結!!
これまで何度も我々を、笑わせ、呆れさせ、感動させてきてくれた若者たちの3年後を描く最終巻。
この銀髪美人妻は誰だ?
と思ってしまうくらい那由多が別人のような落ち着きぶり。ずっと「和子」表記なのもそこら辺を意識してなのだろう。違和感が凄いけど。はっちゃけた那由多が読めない寂しさと、辛い青春時代を送っていた子が最高の幸せ掴んだ奇跡に湧く感慨が混ざる何とも言えない感情は、長期連載の最終回でしか味わえない特別なもの。
あと京が敏腕(辣腕?)編集者になっていたのには驚いた。元々ハイスペックな娘だから一皮剥ければってところか。プライベートは相変わらずだったけどw
と、一部大きな変化があった人もいたが、基本的には仕事して、好いた好かれたですったもんだして、時々馬鹿やってと、彼ららしい日常が繰り広げられていた。まあ3年しか経ってないしね。でも、そのいつも通りの中で見つかる小さな変化の中に、確かな成長が感じられるのが良いところ。
それを言葉と態度で示してくれたのが、我らが主人公・伊月。
根拠の無い自信とふてぶてしさ「無駄に偉そう」が持ち味だった伊月が、今はちゃんと根拠も裏付けもある自信を付けて、それでもまだ大舞台では虚勢を張って「無駄に偉そう」に振る舞う。変わったものと変わらないものを体現する姿が、最後の台詞を含めてらしくて格好良かった。やっぱりお前が主人公だ。
また、ライトノベル作家を主人公にして業界のことを書いてきたこのシリーズらしく、二社の編集長の激論という形で、現在のラノベ業界への憂いを書いてくれたのが一ラノベファンとして嬉しい。いやもう、ほんとそれ。各出版社には易きに流れず気概を見せてほしい。
その後番外編を含めて最後まで馬鹿らしくて笑顔が絶えない、それでいて時々良いこと言って感動させてくる油断ならない奴ら。そんな彼らの物語を最後まで読めて幸せでした。
最後に、
栞ちゃんの将来が大変心配です。