理不尽な世界に幾度も抗った十月五日は過ぎ、わたしと未散が望んだ日々がようやく訪れた。
互いにかけがえのない存在と認めつつも、あと一歩踏み出せない関係が続く毎日。心地よくも、もどかしい関係を変えようとしていた頃、友達の深安さんがトラブルを持ち込んできて……。
「相沢、演劇部に助っ人できてくれ」
かんたんな仕事だったはずのその依頼は、これから起こる事件の前触れで――この時わたしはまだ知らなかった。すでに魔女の呪いは世界に形を変えて伝染していたことを。
恋と友情を知ったわたしと彼女の、不器用な想いにまつわるすこしフシギな物語、第2弾。
幾多の苦難の末、二人で生きる道=お互いの生存ルートを勝ち取った綾香と未散。望んだ日々を迎えた二人に待つものは……
なんだこのかわいいいきものは
初めての友達、未散の一挙手一投足に一喜一憂して浮き沈みが激しい綾香が可愛くて仕方がない。クラスメイトから女王さまと目されている様な子が、初めての恋に戸惑う乙女をやってる姿に胸キュンせずにはいられない。
さらに、それを補強するのがクラスメイトの深安さん視点。人の心が読める彼女から見る綾香と未散の内心が、それはもうあたふたしていて顔のニヤケが止まらない。綾香の視点の地の文、あれでも取り繕っているのか。未散も綾香に負けず劣らずの乙女ぶり。はー、尊い。
そんなわけで、1巻の灰色の世界からは想像できないくらい世界がバラ色に染まっていた。
と、これだけだと色ボケ百合百合ラブコメになってしまうが、バラ色に染まりきらない黒い部分はしっかり残っていて、人の弱さと醜さを描いていく物語は健在。この退廃的な雰囲気がまた好き。
本題は件の深安さん、魔女の呪いにより人の心を読めるようになってしまったクラスメイトの呪いを解くこと。
SF要素は一気にスケールダウンしたが、友情と青春の物語との噛み合わせは断然こちらの方が合っていて、納得のいく結末になっている。今後は今回みたいに忘れえぬ魔女と時をかける魔法使いが、魔女の呪いに囚われた女子を救う物語になるのかな?
大好きなシリーズなので、どうか長く続いて欲しい。