いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「Unnamed Memory VI 名も無き物語に終焉を」古宮九時(電撃の新文芸)

「私、貴方のところに辿り着けて幸せです」
ティナーシャの退位と結婚の日が迫るなか、周囲で怪しげな事件が頻発し始める。歴史を改竄する呪具エルテリアを奪取するため、ヴァルトにより巧妙に仕掛けられる罠。無数の歴史の記憶を持つ彼は、ついに自分と世界にまつわる真実を語り出す。
消えては再構築される時間の果てに、オスカーが下す決断とは――。王と魔女の物語の終わりであり始まり。人の尊厳をかけた選択に向き合う完結巻!


シリーズ完結編。
『Babel』の2巻でオスカーが、300年後なのに名前まんまで妻そっくりの幼女を連れていたのはそういうことだったのか!
いつも思わせぶりな態度で出て来るヴァルトの目的と時読の一族の秘密。過去に戻り歴史を改変する球の正体とが二つある意味。世界の秘密がついに明らかになり、色々な事柄が線で結ばれて腑に落ちる、完結編ならではの気持ちよさが味わえた。同時に丁寧に作られた物語だと再認識。それと、もちろんメインはティナーシャとオスカーの物語だけど、運命に翻弄されたヴァルトの物語でもあったんだなと。
さて、そのメインの二人は、
年齢も能力も関係なく、オスカーがティナーシャを転がすこの感じ。直前までどんなに窮地でも2人になるとじゃれ合うような会話を始める仲睦まじさ。出会い方が変わっても、どんなに過去が変えられても、やっぱり二人はここに落ち着くんだと、嬉しさと安心感があった。
公人としての義務と責任を優先して、私人としての望みは押し殺してしまう生真面目な二人だけど、それだけに貴重な二人のシーンは甘くて少し切なくて、これが読みたかったんだと、ずっと続けばいいのにと思ってしまう。
そんな二人が苦難の末に手を取り合う結婚式は、、、
うん、なんとなく分かってた。でも改変前より幼いティナーシャのウエディングドレス姿と、結婚式に出席するルクレツィアの様子は読みたかったな。
ハッピーエンドとは言い難いけれど、この先どんなに過酷な運命が待っていようとも、二人一緒なら大丈夫。そう思わせてくれるラストで読後感は上々。
で、続編があるようで。
国という柵がなくなり守るべきものがお互い以外になくなった二人が、どんな無茶をしてくれるのか続編が楽しみ。