いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「浮遊世界のエアロノーツ 飛空船乗りと風使いの少女」森日向(電撃文庫)

この世界に大地はない――世界は一度ばらばらに崩れ落ち、人々は大地から切り離された浮遊島で生活をしていた。
とある孤島で両親を待ち続けていた少女・アリアは、飛空船乗りの青年・泊人と出会い、両親を捜す旅に出る。
世界を変える《干渉力》の才能を持つが故に人々から疎まれ、心を閉ざしていたアリア。自由気ままな飛空船乗りの泊人や、文化や価値観の異なる島の住人たちとの交流のなかで、少女は《風使い》としての力を開花させていく――。
広大な空に浮かぶ島々を巡る、驚きと発見に満ち溢れた自分探しの旅。心躍るロードノベル開幕!


大地はなく、空に無数に浮かんだ浮遊島で人々が生活している世界。始まりの島を探す青年と、彼の拾われた父母を探す少女が一緒に旅をするファンタジー。浮遊島それぞれに人と文化と役割があり、その島々を旅してまわる所謂『キノの旅』スタイルの物語。
空を駆け浮島を巡るロマン溢れる世界観、目新しさはないが訪れる島の設定で話をどうとでも膨らませられる自由度、重い過去を持ちながらも旅先の困った人を放っておけない優しいキャラクター。どれも良かった。
しかし、厳しい世界観とキャラクターの重い背景に比べて、話が“やさしい世界”過ぎて、物語としては違和感がある。
ハッピーエンドにこだわるあまり、その過程がご都合主義になり、ストーリーラインが歪んでしまっている気がする。第二話はバッドエンドの方がしっくりくるし、第三話の結末の理由付けは強引だし、第四話はこんなちゃんとした理由があるなら、覚えていた方が素直に乗り越えられていたような気がするのだが。
一つ一つのパーツは良いものが多いのに、一つにパッケージングするには無理があるパーツを集めてしまった。そんな一冊だった。