いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「義妹生活3」三河ごーすと(MF文庫J)

悠太と沙季が義理の兄妹になって初めて迎える夏休み。何故か悠太が働く書店に履歴書を出した沙季は、アルバイトの後輩として働き始めることに。兄ではなく、先輩として彼女と接していくにつれて、悠太は今まで見えていなかった、沙季の新たな一面に気づいていく。そんなある日、同じシフトで働く読売栞が、沙季の様子にひとつの不吉な兆しを見出す。
「あの子の真面目で自分に厳しい、甘えられない性格は、いつかあの子自身を壊してしまうかも」
決断を迫られる悠太。期待しない、干渉しすぎない――その約束を破り、彼女の在り方に影響を与えてしまうような介入をすべきか、否か。兄として選んだ“選択”とその結末は……?


基本はバイトと勉強、一日だけプールな、8月後半の一週間を切り取った3巻。
件のプールイベントが浮いている件。
他人とのコミュニケーションをとることを苦手としている二人にとって、真綾以外に普段絡みのない同級生も参加するこのイベントはストレスでしかないと思うんだけど。いくら沙希がプールが好きとはいえ、普通に楽しめていることに強い違和感がある。行く前のプールを推す悠太の行動もなんか不自然。夏だから水着イベントを無理矢理ねじ込んだように思うのは穿った見方が過ぎるだろうか。
それはともかく、遅ればせながら悠太も自分の恋心を自覚して、晴れて?両片想いになった二人。シリーズのターニングポイントになる回だった。
両片想いのもどかしさを楽しむのがメインコンテンツなのは分かっているが、ここまでストイックで自分の幸せが二の次三の次になる思考の二人がやると、甘さや両片想い特有のムズムズ感よりも切なさや辛さ勝ってしまう。どうしようもない配偶者に苦労した親を、ずっと見てきてから出て来る考え方が遣る瀬無い。こんなに愛情が籠っているのに痛々しい「兄さん」は他にないだろう。
そして最後にタイトル『義妹生活』の意味が明かされるのだが、こんなところにも沙希の我慢と自分を押し殺す要素があるとは……
悠太はどんな結末でも自分で踏ん張れそうな安心感があるが、沙希は作中でも心配されているとおり、どこかで壊れそうで怖い。
さらにお互いを想う気持ちが強くなった二人。秋はさらにすれ違ってしまうんだろうなあ。


読売先輩の口絵がひでえwww