いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「青い春を数えて」武田綾乃(講談社文庫)

放送部の知咲は、本番の舞台にトラウマがある。だが、エースの有紗の様子が変で――(白線と一歩)。
怒られることが怖い優等生の細谷と、滅多に学校に来ない噂の不良少女・清水。正反対の二人の逃避行の結末は(漠然と五体)。
少女と大人の狭間で揺れ動く5人の高校生。瑞々しくも切実な感情を切り取った連作短編集。


前の話に出てきた人物が次の話の主人公だったり、チラッと出てきた人物が先の話の主要人物だったり、登場人物が少しずつ重なっているリレー形式で高校生が主役の短編集。
学校や社会に感じる窮屈さや息苦しさ。型にはめられることやレッテルを張られることへの忌避感と、逆にそこからはみ出すことへの恐怖感。夢やプライドと現状との隔たりへの苦しみ。
きっと誰もがどれかは感じたことのある若い頃の葛藤に、悩み苦しみ抗い怯える思春期の少女たち(+男子1名)の今を切り取った作品だった。これも一つの青春模様なのは間違いないが、「青春」よりも「思春期」の方を強く感じる。
こういうことはとうに通り過ぎているおっさんが読むと、こんなこともあったなーとノスタルジーな気分になれて楽しい読書時間だったが、主人公たちと同年代が読むとどう思うのだろう。共感できて嬉しい気分になるのか、同じ悩みを抱えている人がいることに安心するんだろうか、悩みに対して特に答えがないことに落胆するんだろうか。
学生時代に読んでみたかったな、と思う作品だった。