極東の島国・日之雄。その皇家第一王女・イザヤ。幼なじみのクロトは10才の時にイザヤにとんでもない“狼藉”をはたらき皇籍剥奪された曰く付き。しかしふたりは今、第八空雷艦隊司令官と、彼女の超キレ者首席参謀! ガメリア大統領となったカイルは、史上最も巨大凶悪な飛行戦艦「ベヒモス」を建造し日之雄に迫る。奴の戦争の目的は、イザヤを娶ること。バカか!! そんなこと許せるわけがないクロトは、カイルの仕掛けた「三角関係大戦争」の直接決戦を断固受けて立つ! 作者・犬村小六は、今巻に、自身の生きる力の全てを叩き込んだ!
日之雄の存続が掛かっているのに惨敗必至、絶望の決戦に挑む最終巻。表紙の笑顔に至るまでの物語。
味方の駆逐艦は残り八隻。敵戦力は数十倍で性能も上。すでに東京は火の海。そしてカイルからの求婚という名の最後通告まで来て、まさに絶望という言葉がピッタリの状況。
そこまで追い込まれた状態から、国の行く末も、上の命令も、正しい思想や倫理も関係なく、男の子が女の子の為に意地を張って我が儘を貫き通す戦いが繰り広げられるのだから、盛り上がらないはずがない。綱渡りの作戦に手に汗握り、クロトの味方への想いに涙し、クロトの活躍に心で喝采を送る。
当然、最も活躍したのは主人公のクロトだが、仲間たちの最期にもグッと来た。
「俺に構わず先に行け」「俺の屍を越えてゆけ」。今やネタにされるようなシチュエーションを、文字通り決死の覚悟の場面で本気でやるとこんなに格好良くて感動するんだなと。
中でも鬼束兵曹長。これまで五月蠅いベテランくらいのイメージしかなかったのに、クロトを焚きつけた言葉といい背中で語る姿勢といい、格好いいとしか言いようがない。鬼束さんは自分の中ではクロトも速夫も超える最強のヒーローに登りつめた。あんたこそ男の中の男だ。
一方、男を落としていったのがカイル。求婚後はピエロにもなれず、ラスボス感ゼロであっさり退場していったのが意外で不満。カイルが強者として立ちはだかっていたら、決戦もエピローグももっと盛り上がっただろうに。敵将キリング提督の方がまだ悪役感があった。
エピローグは、太平洋戦争をモチーフにした作品なので、もちろん敗戦で人死にも沢山なのだけど、その中では最大限のハッピーエンドでニヤニヤ度も高い。まあ、そもそもイザヤを笑顔にするための物語だしね。気兼ねなくデレるイザヤの可愛さといったら。クロトさんズルいわー。あんな最低なプロポーズしておいて、このイザヤを独り占めとかズルいわー。もう一組は素直に祝福できるのに。それにしても速夫がここまで出世するとは。
『とある飛行士』の犬村先生らしい空のロマン溢れる愛の物語だった。コメディパートのはっちゃけ具合と、それぞれの戦う動機、帯にもなった鬼束の台詞に「自分の為に、大切な誰かの為にバカになれ」というメッセージを受け取った。