いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「豚のレバーは加熱しろ(5回目)」逆井卓馬(電撃文庫)

ジェスと二人で旅をして真実を知り、ようやく気付いた、自分自身の気持ち。一緒にいたい。ジェスと一緒に、終わりのない旅をしたい。
そのためにまず、闇躍の術師によって乗っ取られてしまった王朝を奪還しなければならない。ノット率いる解放軍、王子シュラヴィス、三人の美少女、そして異界からやってきた三匹の豚たち一行は、起死回生の切り札を求め孤島へ向かう。
鍵となるのは、孤島が入り口になっているという裏側の空間、深世界。人々の想いによって成り立つその不思議な世界では願望が具現化するようなのだが……
「見てください、豚さん! 私の胸が大きくなっています……!」
どんな願望だ!? やれやれ、どうやら今回も、一筋縄ではいかないようだ。


今度は本当に不思議ワールドへ行きましたな5巻。
中途半端な零体になってしまった豚の身体を取り戻すため、同時に闇躍の術士に囚われたマーキス王を救出するため、初代女王ヴァティスの残した記述を頼りに、ジェスと豚とおまけでもう一人が裏側の空間、深世界に身を投じる。
人の想い、願い、執念が形になる世界・深世界。個人的な脳内イメージはマザー2の異世界だった。みんなのトラウマ、ムーンサイドじゃなくて終盤のマジカントの方。過去の思い出が無秩序に出て来るごった煮感と、色がバグっているあたりがそれっぽい。
そんな、なんでもありの世界なのでもっと遊んでくるかと思ったら、今回はシリアス重視。前回が幸せいっぱいな新婚旅行みたいで思いっきり遊んだから、今回は自重したのかメリハリをつけたのか。まあ前半はそれなりに遊んでいたけど。でも、豚も言うように巨乳ジェスたそは違うんだよなー。
話としては、ジェスと豚ではなく王家の悲しい過去と二人についてきたノットがメインだったかと。
ノット邪魔、と割と終盤まで思っていたが最後のあれを読まされちゃうとね。劇的な出会いと悲惨な別れを経験してしまうと、そう吹っ切れるものではないか。ジェスと豚もああなっていた可能性が高かったと思うと、やりきれない想いが。あとはセレスに頑張ってもらわないと。
この世界を知る物語としては面白かった。ただ、前回が良すぎた反動もあるが、ジェスと豚さんの物語としてはちょっと物足りない感じ。
満点とはいかなくても一先ず目的を達した彼ら。次は残った課題、まずは首輪かな。なんて想像していたら、唐突な現実世界エピローグ。次回は現実世界の方で波乱の予感?