いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 VII」支倉凍砂(電撃文庫)

死者の乗る船が渡来する港町・ラポネルでの騒動を後にして、コルとミューリは再びラウズボーンへの帰路につく。
教会の不正を糺し、王国との争いを収める決意を新たにするコル。賢狼の娘ミューリはというと、理想の騎士冒険譚を執筆するのに大忙しな様子で。
そして、ラウズボーンへと戻った二人を待っていたのは、ハイランドと教皇庁の書庫管理を務めるカナンだった。カナンは“薄明の枢機卿”コルによる聖典俗語翻訳をさらに世に広めるため、教会が禁じた印刷術の復活を持ち掛ける。
さっそく職人を探すこととなったコルとミューリ。だが、教会から追われる身の職人は協力する代わりに、『心を震わせる物語』を要求してきて――!?


王国と教会の戦争が現実味を帯び緊張感を増す情勢の中、教会を内部から崩す切り札はコルの翻訳聖典聖典を増刷する為、この世界では教会によって弾圧され消えてしまった活版印刷の技術の細い手掛かりを探すことに。

いつの時代もワナビは大変だというお話(←たぶん半分くらいあってる)
ミューリさん、自作小説に凝る。
騎士の稽古をしたり伝説の剣を探す冒険に憧れたり、いつも男の子らしい夢を追いかけているミューリについに女の子らしい趣味が……自分たちの冒険を基にした冒険譚かい! やっぱり男の子だったわ(^^;
話としては戦争を回避したい勢力の理性と権威、戦争したい勢力の利権と意地のせめぎ合いといったところなのだけど、そこに出版物関連のいざこざ、修道院運営の資金、各団体と個人の思惑等々が絡み合って、話が複雑怪奇。中盤まででは全く予想もつかなかった驚きの着地点といい、最後まで先の読めない、いい意味で振り回してくれるストーリーで面白かった。
王国vs教会という視点では主に王国側に進展が大きかったので、そろそろ本格的に教会に切り込んでいくことになりそう?
まあ、相変わらずミューリの恋路はまるで進んでいないのだけど。
新たに騎士も理由にしてミューリの求愛を拒んでいるのに、隣に立ちたい傍にいたいと言い出すコルには呆れるしかない。元々ヒーローとヒロインが逆転したシリーズという認識だったけど、作中では男にモテまくるし、ミューリに対しては思わせぶりな女性みたいな振る舞いだし、コル坊は悪女の素質があるな。
本筋は話が進んだので、次はミューリの難攻不落のコル城攻略の進展に期待しところ。