いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「七つの魔剣が支配するXI」宇野朴人(電撃文庫)

四年生への進級を控えたオリバーたち。恒例の長期休暇に、彼らは仲間の故郷への帰省旅行を計画した。剣花団のメンバーにテレサとマルコを加え、連合各国を巡る船旅が始まる。
旅先でキンバリーの面々と遭遇しながら、やがてカティの故郷、連合北方の湖水国へと到着する一行。広大な森林と無数の湖、人里の間近に息づく湖竜、本来の姿を保ったままの亜人種の集落――数々の光景が彼らを圧倒する。そんな中、逗留先のアールト家では、異端が絡むカティの両親の過去を知ることになる。
旅は進み、一行はシェラの実家、大英魔法国南部の旧家マクファーレン家を訪れる。シェラの母の豪快な性格に振り回されながら忙しなく過ごす中、彼らは一風変わったケンタウロスと出会い――。


春休みに一部のメンバーの帰省も兼ねた旅行、束の間の休息な11巻。
表紙の通りにカティ回。
キンバリーの外に出ての船旅で、羽目を外してどんちゃん騒ぎしたり、ロッシと合流して観光したりと、いつもより穏やかで楽しげな空気が流れているが、それだけじゃないのが『ななつま』。
カティの故郷で、ゴブリンの集落での交流やマルコを連れてのトロールの集落訪問など、亜人の人権・待遇の改善を願うカティが目指すものを剣花団メンバー全員で体感して理解を深める内容。一部現代社会に通じる、考えさせられる重いテーマが込められているのがこのシリーズらしい。
それと合わせて語られるのが、メンバー内でも極めて“危うい”とされるカティの実態。
……なのだけど、こちらはあまり実感が湧かないというのが正直なところ。
カティ両親とオリバーの会話は緊迫感を孕んでいたけれど、カティ本人の独白や旅行中の動きは恋する乙女モードで(ガイ君は役得過ぎやしませんかね)、そもそも戦闘能力では上級生を凌ぐ人間離れしたメンバーが多い中で、戦闘能力では最も一般人に近い平和主義者なカティが、最も危ういと言われても。前作で主要キャラを退場させた実績のある作者なので、ここまで前振りされたら怖いというのはあるけれど。
後半はシェラの実家へ。
こちらはシェラのエルフ母の個性が強くてシェラが空気。ま、まあ、カティがメインの回だから(震え声)
短い間にいくつものインパクトを残してくれたお母様、その中でも面白かったのは唐突に始まった剣花団評。お眼鏡にかなったのはナナオだけか。それにしてもあんまりなオリバーの評よ。やっぱり目が死んでるのが悪いんだろうか。カティ両親といいシェラ母といい、今回のオリバーは散々だったなw
次回から四年生(たぶん)。どんな地獄が待っているのやら。