いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「妹妹の夕ごはん 台湾料理と絶品茶、ときどきビール。」猫田パナ(富士見L文庫)

コンビニ弁当と缶ビールが夕食の定番で、自分を寿司ネタにたとえると「芽ネギ」(好きな人は好きかもね的な)、松沢夕夏30歳。
そんな枯れきった一人暮らしの家に、台湾から18歳の留学生がやってきた。夕食作りを条件にルームシェアすることになったのは、料理上手でアイドルオタクな楊春美という大学生の女の子。
年齢も趣味嗜好も違う彼女と一緒に暮らすことに不安を感じていた夕夏だけれど、初日から、春美の作るおいしいごはんに胃袋を掴まれて――。つまらない毎日が、しあわせな日々になる。ごはんから始まる異文化交流ものがたり。


三十路の独身OLと台湾からの留学生、一回り歳の離れた女性二人がルームシェアをする物語。
・長身で釣り目、性格はズボラ。見た目も中身も姉御な夕夏。婚活は上手くいってない。
・料理上手で誰かに尽くすことが好きな大学生春美。他人の笑顔に固執し献身的すぎて少々危うい。
姐姐(ジェジェ)妹妹(メイメイ)と呼び合うことにした二人が、お互いに助け合い好影響を与えあっていく。生活が上手く回り始めた二人住む部屋には彼女たちの知人友人たちも集まり、懐の深い姐姐と妹妹の美味しい料理が作る温かな空気に癒されていく。といった感じの、心温まる人情話。
どの話もハートフルだったけれど、二人の食卓に訪れる人たちがこの手の短編連作風の人情話ではよくある一話限りのゲストキャラではなく、次第にメンバーが増えていって団欒な雰囲気になっていくのがとても良かった。
ただ、救われる人が自分たちも他人もと多い所為か、全体的にややうす味に感じる。
あと、ラストが急展開で驚きと違和感が。直前まで別に結婚しなくてもな感じが出てたような気がするんだけど。
まあそんなことよりも、本作の最大の魅力は妹妹の作る台湾料理の数々だろう。
基本香り強め油多めな台湾料理の数々が胃袋を刺激する。姐姐のビールが進んでしまうのも仕方がない。ところで“ときどき”ビールは嘘だよね。“大体”ビールだよね。
それと一緒に多くの台湾茶も出てくるが……香りを楽しむ台湾茶の魅力を文章で伝えるのは難しいなと。
人情話としては一長一短で普通、飯テロ作品として中々の攻撃力。そんな一冊。