いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「月曜日の抹茶カフェ」青山美智子(宝島社文庫)

桜並木のそばに佇む喫茶店「マーブル・カフェ」では、定休日の月曜日に抹茶カフェ」が開かれ――。
ツイていない携帯ショップ店員、愛想のない茶問屋の若旦那、祖母が苦手な紙芝居師、京都老舗和菓子屋の元女将……。
一杯の抹茶から始まる、東京と京都をつなぐ1心癒やされる物語。


デビュー作『木曜日にはココアを』と同じマーブル・カフェから始まる、東京と京都の二つの都市を舞台にした物語。
前の話の登場人物(主人公の友人だったり、お客さんだったり、たまたま同じカフェにいただけの人だったり関係性は色々)が次の話の主人公になる、人と人で繋がっていくリレー形式で綴られる十二編の短編連作。
日々の不満や不安、問題を抱えた人が、あるきっかけで前向きになっていくハートフルストーリー。各話の主人公たちが誰かの一言でハッと気付かされ、狭まっていた視界が広がる。その瞬間が気持ちいい。
きっかけの一言をくれる人物の関係性はまちまちで、身近な人の一言が心に刺さる話ももちろん良いのだけど、「なんかいいな」と思ったのは偶然出会った人の何気ない一言がきっかけになる話。
偶々昔の店舗の客だった女性バンドマンの感想が初心を思い出すランジェリーショップのデザイナーの話(「春先のツバメ」)や、頭の固い老舗和菓子屋の先代女将を解した若いサラリーマンの客の言葉(「夏越の祓」)など、普通なら交わらない縁遠い人の一言がきっかけなる話は、一期一会の奇跡の瞬間に立ち会えたみたいで嬉しくなる。
また、第一話と最終話の繋がりは前作『木曜日にはココアを』と同様に、恋の始まる瞬間という最高の甘味を楽しめる。
デビュー作以降の青山さんの作品は異界のお店や神様、ミステリアスな司書など特別な人がきっかけをくれる話が多かったけど、ごく普通の人たちが誰かが誰かに人知れず影響し合っていく、こっちのスタイルの方が好きだな。