いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ママ友と育てるラブコメ3」緒二葉(ガガガ文庫)

夏休み前日の放課後。響汰は、進路について雉村先生に呼び出されていた。今まで想夜歌のことを第一に考えていたからか、いざ自分の将来となると何も思いつかない。そして、澄との今後について。彼女に対して、ママ友とは違う特別な感情を抱いていることを自覚しているものの、その心の形に「恋」なんて安直な名前はつけられない。自分は彼女とどうなりたいのか。澄は、自分のことをどう思っているのか。悩み、迷い、そして決意を固める。来る二人きりの、夏祭りデートへ向けてーー。子育てラブコメ最終巻。


家庭の事情で高校生ながらに歳の離れた妹・弟の親代わりをしている響汰と澄。高校生なのにママ友な二人のラブコメ第三弾。
キャンプに夏祭りにとイベント目白押しの夏休み、二人の関係はママ友から先に進むのか?な最終巻。
良かった。嬉しさよりも安堵の気持ちが強いハッピーエンドだった。
表面上はいつも通りに妹バカ、弟バカをやっている響汰と澄が、相手への好意を自覚して戸惑い躊躇する、その葛藤を描く話だった。
まだ高校生の身でありながら、妹や弟に向ける過度な愛情を代替行為や依存だと自覚してしまっているのが切なくて切なくて。相手への好意を伝えることをためらう理由が、恥ずかしさだけでなく、好きになった相手を新たな依存先にしたくないからなんて、どれだけいい子なんだ君たちは。「家族になりたい」普通に読めば一足飛びでド直球なプロポーズの言葉なのに、そこまでの過程を読むと嬉しさよりも切なさが勝ってしまう。
それでも、親の多忙で初めからなかった響汰と、父の突然の死で途切れてしまった澄。理由は違えど親からの愛情がないことの辛さを知る二人なら、家族になった後の幸せの図は容易に想像できる。二人の子供は妹と弟にも溺愛されるんだろうなあ。
1巻の時点ではやべー奴二人のラブコメで笑って読んでいたけれど、2巻3巻と高校生が子育てする背景と問題をちゃんと描くシリアスな物語になった異色作。それに伴ってニヤニヤや茶化した気持ちから純粋に二人を応援したくなる、より感情移入できるラブストーリーになっていった。読んでいて温かな気持ちにさせてくれるいい話だった。