いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。」志馬なにがし(GA文庫)

「打上花火、してみたいんですよね」
花火にはまだ早い四月、東京の夜。
内気な大学生・空野かけるはひとりの女性に出会う。名前は冬月小春。周りから浮くほど美人で、よく笑い、自分と真逆で明るい人。話すと、そんな印象を持った。最初は。
ただ、彼女は目が見えなかった。
それでも毎日、大学へ通い、サークルにも興味を持ち、友達も作った。自分とは違い何も諦めていなかった。
――打上花火をする夢も。
目が見えないのに? そんな思い込みはもういらない。気付けば、いつも隣にいた君のため、走り出す――
――これは、GA文庫大賞史上、最も不自由で、最も自由な恋の物語。


第15回GA文庫大賞《大賞》受賞作。
普通の大学生と盲目少女の恋物語、だと思っていたら少女のがん闘病記だった。ヒロインが病気になるお涙頂戴ものは飽き飽きしてしまっているので、あらすじにそう書いてくれれば手を出さなかったのに。


以下、ひねくれたおっさんの感想


ラノベ業界、ライト文芸業界が一時期乱発しすぎばかりに、現在後発作品のハードルがとんでもなく高い闘病/難病もの。そこに果敢に挑戦した勇気は賞賛したいが、出来が良いかというと微妙だ。
この手の作品の中でも不幸の詰め込み過ぎに感じる。おかげで話が進むたびに「ヒロインが病気だぞ、ほら泣けよ」と言われているような気分になって、どんどん白けていってしまった。
盲目なら盲目でそのテーマだけ書いてくれれば良かったのに。それならまだ読めたのに。
文章は違和感なく読めるので 完成度の高さという点ではちゃんと大賞なのだと思う。刺さる人には刺さるじゃないかな、たぶん。あれもこれも入れたくなる、詰め込み過ぎという点では新人賞らしいとも言えるけど。
ミステリならともかく、こういう不幸な出会いを減らすためにも、あらすじで大事な情報を隠すのはやめてほしい。