いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「安達としまむら99.9」入間人間(電撃文庫)

安達としまむら99.9 (電撃文庫)

「おかえり。仕事疲れたでしょ」
「うん。あ、でもしまむらの顔見たら疲れが吹っ飛んだ……みたいな……」
「ほーう。じゃ、元気なとこ見せて」
「え……。げ、げんきー」
こんな調子で、私たちはずっと続いていくんだろうなあ。たぶんおばあちゃんになっても。ひょっとすると三千七百年くらい経っても。
安達としまむら』BD/DVD特典小説、イラスト付きで待望の文庫化!


アニメBD/DVD特典小説4編+書き下ろし1編、安達としまむらの卒業後の日常を描く短編集。
大学生になったしまむらと日野。社会人になり同居をしている二人。お婆ちゃんになったしまむら。そして……。『安達としまむら』のその後の物語。……を何故か、三千七百年後の人類が滅びゆく世界を旅する少女に、水色髪推定宇宙人なヤシロが思い出話として語る体で綴られる。
ああ、それで99.9なのか。銀河鉄道999のような宇宙を旅するSFな部分もありつつ、でもそこまで壮大ではなく、どこまでいっても二人の少女の物語であると。だから小数点を付けて10分の1にスケールダウンしたわけだ。そうするとヤシロがメーテルさん? ないわーw(※注 もちろん勝手な解釈です
『Chito』や『ムラ』など大人になってからの二人の生活を描く話もあるけれど、印象に残るのが八十歳を超え一人残されたしまむらを描く『Abiding Diverge Aline』と死後の世界のような幻想的な『  と   』。どちらもしまむらがヤシロを適当にあしらいながら、安達を想い物思いに耽る話で、安達の想いが完璧に成就した喜びと、「なんだいぞっこんじゃないか!」というニヤニヤと、幸せのまま静かに閉じていく様子に言いようのない寂しさが同居する不思議な感覚。
また、謎でお遊びにしか見えなかったSF設定が「どうやっても運命に導かれ出会う二人」を印象付ける仕掛けになっているのが上手い。
初めにこちらを読んでしまったけど『  と   』の読後感からするとSSの方を先の読むべきだったかな?