いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「安達としまむらSS」入間人間(電撃文庫)

安達としまむらSS (電撃文庫)

体育館の二階で出会って、美人だなーとは思っていた。同時にやつは、わたしの三倍ぐらい不良だなとも。
本人の柔らかい印象のせいだった気がする。最初に名前を聞いて、浮かんだ名前はひらがなだった。
卓球場から、マンションまで。女子高生からOLまで。サボり仲間から、恋人まで。長いようで短い二人の時間。そのこぼれ話を拾った書き下ろし多数の短編集。
同棲直前、安達母への挨拶の日を綴った中編『そして……』も収録。


安達としまむら」の何気ない日常を切り取った掌編集。
しまむら視点の『かつて、黄金の時代があり』に始まり、安達視点の『白銀の時間があり』、しまむら家(長女以外)視点の『青銅の時間があった』を経て、ラストが安達母視点の中編『そして……』で締める、大きく分けて四章編成。
安達としまむらが出会ってすぐエピソードあり同棲を始めてからのエピソードもありの時系列はバラバラで、一話の長さも4ページのものがあれば中編といえる長さのものありと様々。その雑多感じが「安達としまむら」らしい。
まずはしまむら視点から。
基本他人に興味がないしまむらなのに、安達の特別である事は満更でもない様子がチラチラと顔をのぞかせるのところが糖度が高い。特に同棲後のエピソードはしまむらから積極的に甘えに行ってる時がいくつかあって、顔のニヤケが止められない。いやー、美女の膝枕っていいものですよね。
次の安達視点は安定のテンパり具合。「安達としまむら」といえばやっぱこれよ。
そんな尊みとらしさが極まっているのが、不器用極まりないファーストキスの様子を描く『原点の感触』。おどおどしながらも勢いで突っ込んでいく安達に対してのしまむらの返しがとても扇情的。安達はよく脳の血管切れなかったな。しかし数話前の『嵐』といいこれといい、しまむらさんは魔性の女やで。
その次のしまむら家視点は、家族が一人家に居なくなる寂しさそれぞれの形で表現する切なさが強い話。
そんなに仲良くないし居なくて困ることはないけれど、胸に一ヵ所穴が開いたような言いようのない不安を感じている妹ちゃんのモヤモヤに共感する。そして、しまむら母は安定のウザさ。
ラストは安達母が自分の知らない娘の姿を目の当たりにする同棲前の両家の顔合わせお泊り会。
同棲前に親同士の顔合わせ←結婚前提と考えればわかる。同性カップル←まあ……そういうこともあるよね。お泊り会←????? 発案がしまむら母だからね、仕方ないね(諦念)
この瞬間に娘の幸せを願えるだけでも、安達母はまだちゃんと母親出来ているんじゃないかな、たぶん。しかし、機会をくれたしまむら母を褒めればいいのか、半分以上を台無しにしているしまむら母を怒ればいいのか。判断に悩む。
安達としまむら」はこれで今度こそ完結かな? 一年くらいしたらしれっと新刊が出ていそうではある。