いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「レプリカだって、恋をする。3」榛名丼(電撃文庫)

レプリカだって、恋をする。3 (電撃文庫)

オリジナルがやりたくないことを押しつける身代わり、〈レプリカ〉だった私だけど、その役割を失って。
「素直が何を考えてるか分からなくて、怖い」
そんな思いを抱えながら、季節は冬に向かっていく。
素直が修学旅行に行っている間、私はアキくんと一緒に、リョウ先輩の故郷・富士宮へ行くことになった。それぞれ別々の場所で、はじめての旅を楽しみつつ、レプリカの仕組みの謎を紐解くピースを拾い――。
そして私は、素直が秘めた思いと、知らなかった真実と、向き合うことになる。
――ナオと素直。それぞれの視点から描かれる、転機の第3巻。


リョウ先輩消失によってショックを受けるナオに追い打ちをかけるように、素直が学校へ行きだしやることがなくなってしまったナオ。そんな中訪れた次のイベント、修学旅行。素直が京都へ行っている間にナオはアキと富士宮へ小旅行へ行くことに。

いつものメルヘンな地の文はナオのピュアで素直な感性だったんだなって。
これまでほぼナオ視点だった物語に素直視点が加わったことで見える景色が少し違っていた。物事への感想にどこか棘がある素直視点の地の文と、可愛らしく時に幼さも感じるナオ視点の地の文。その対比でナオ視点がいつも以上に可愛らしく感じる。後々それが切なさへと変換されてしまうのだけど。
今回も見事に上げて落としてくれた。富士宮旅行で前回のショックが薄らいで、微笑ましいナオとアキの姿にニヨニヨし、ナオのはしゃぎぶりで楽しい気分のお裾分けをしてもらっていたのに。おまけで静岡県人は「まかいの牧場」ネタで一笑いしていたのに。またしても最後に爆弾を用意しているなんて。
その爆弾とは〈レプリカ〉とは?の答え。まさか話がこういう方向へ行くとは。
これまで透明感のあるどこかメルヘンチックな雰囲気小説という印象だったので、不思議は不思議のまま終わるものだと思っていた。それが急に〈レプリカ〉の輪郭がはっきりして、明確な終わりが示されたのは完全に予想外でビックリしている。
そのおかげで楽しかった旅の思い出がひどく儚く切ないものになってしまったわけだけど。物語の巧みな作りに感心しつつ、なんて仕打ちを……とも思う。
果たしてナオはどんな決断を下すのか。隣にいたのに空気だったもう一組の〈オリジナル〉と〈レプリカ〉の決断は。若者たちがどんな道に進むのか、次回が待ち遠しい。