いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「義妹生活10」三河ごーすと(MF文庫J)

義妹生活10 (MF文庫J)

バイト先での新たな出会い、見知った友人の知らない表情。初めて尽くしの高校生活最後の夏、それは受験を控えた悠太と沙季にとっても思い出を作る最後のチャンスだった。花火大会に行きたい沙季は、将来のために勉強に集中しようとする悠太を誘うタイミングを見出せずに悩んでいた。そんな中、読売栞の就職前の最後の思い出にとバイト仲間たちとのデイキャンプが企画されるが……?
勉強合宿、キャンプ、水着とショッピング、自己肯定感の高さと低さ、花火大会。将来に悩み焦り心ゆれる“兄妹”が紡ぐ思い出の恋愛生活小説、第10弾。



夏休み。学友との交流が一時的に薄くなり、二人の時間が増える時期。
受験生ではあっても高校生最後の夏休みにひと夏の思い出をなんて淡い期待をしていたが。。。
この二人の性格上難しいだろうとは思っていたけれど、むしろ双方自分のネガティブ思考に埋没していく方向にまで行ってしまうのは予想外。まさか二人してカウンセリングを受けているような状況になろうとは。
沙季はまだいい。
バイトの後輩の存在で悠太への独占欲を見せたり、バイトや勉強合宿で離れ離れになると素直に寂しい思いを吐露したりで、恋する少女らしい可愛い姿を見せてくれた。「浅村悠太欠乏症」とか「義妹生活日記」とか面白ワードでニヤニヤ度も高い。それにカウンセリング相手も普通に母親だったし。
問題は悠太の方。
志望大学志望学科もないのに勉強だけを頑張っている危うさ、自分の健康への頓着の無さ、そして自己肯定感の低さ。カウンセリング相手が塾でしか会わない同級生なのは異常だ。というか藤波さんがいい人過ぎる。彼女にとっては、周りばかりを気にして自分の意見のない悠太は過去の自分を見ているようで嫌で、見るに見かねてなんだろうけど。
それと気になるのが、悠太視点では沙季個人への想いがあまり出てこないこと。悠太好きを押し出している沙季の視点とはかなりの温度差を感じる。自己肯定感の低さは母親の影響が大きそうだけど、この執着の無さもそうなのか、家庭環境のせいなのか。
この温度差がここからまたすれ違いの原因にならなければいいけど。意見のすり合わせは頻繁にしていても、二人のそれは家に例えると外壁の事ばかり気にしていて、肝心な内装・住空間に対しての擦り合わせはまるでしていないから。とりあえず花火大会に誘うことも出来ないのは、健全なお付き合いではないよね。
そんなわけで、開放的な夏休みのはずが逆に大変不安を煽られる回だった。揺れ動く心情が描かれるのが青春ラブストーリーの醍醐味だけど、この二人の場合は針がマイナスに振れてる場合が多い。
今回のカウンセリングの効果が出てくれればいいけど、周囲のへのカミングアウトでまた変な方向に拗れそうな予感はしている。たまには穏やかにイチャイチャしてくれてもいいのよ?