“あれ”から一年が経とうとしていた。
「豚さんはすっかり、私がいないと生きていけない身体になってしまいましたね」
嬉しそうに言うジェスの手には頑丈な鎖が握られている。鎖の先にはブヒブヒと鳴く一匹の豚――もちろん、俺だ。
豚と美少女、二人の奇妙な共同生活がいま、舞台を変えて再び幕を開ける。
“あれ”から四年後のメステリアでは、かつての旅の仲間たちが奮闘を続ける。英雄は遂に結婚式を挙げようとしていた。イノシシはかつての飼い主と再会。龍族の青年は双子の子守りに明け暮れていた。
世界は刻々と変わっていくが、旅はずっと続いていく。これはそれをほんの少しだけ切り取った、おまけの一冊だ。
あれから一年後のジェスが来てしまった日本と、あれから四年後のメステリアの現状が語られるシリーズ完結編。
ジェスが日本に来てついにご対面……こっちでも豚になるんかい!
というわけで、一年後の日本では「最後の旅は豚の故郷で」という粋な計らい、エピローグらしい楽しい旅路だった。東京あり地方あり、豚による蘊蓄盛り沢山でまるでブラ〇モリの様……だと思っていたら、本人が言ってたわw というかこれ、旅というより観光デートなのでは?
ジェスが意外と日本文化に馴染んでいて、そこを含めて豚との旅を心底楽しんでいるのが分かるのがいい。時折ヤンデレの気配を出しつつも、やっぱりジェスは一途で素直で可愛いことが最後にして再認識できた。ジェスたそ~
四年後のメステリアの方は、まだまだ問題は山積みながら少しずつ良い方向に向かっているメステリア様子が、サブキャラ達の視点で語られる。
二人の旅で出会ってきた、助けてくれた仲間たちがそれぞれに自由と幸せを掴んでいる様子にどれもジーンとくる。中でも一番はセレス。ジェス以上に報われてこなかった彼女が幸せを掴めたことがとにかく嬉しい。
そしてラストは……。
幾多の試練と障害を乗り越えて、世界の壁まで破ってしまった一人の少女の一途な想いが通じた瞬間に感無量。暴走と邪魔で締まらない感じなるのもまた、この二人らしくて良し。
旅に始まり旅立ちで終わる、少女と豚が出会って旅をする物語の最後に相応しい納得の最終巻だった。忘れていた伏線も回収されていたしね。完結おめでとうございます。厳しくも楽しい旅路と、最高に可愛いヒロインをありがとうございました。