いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「夏休みの空欄探し」似鳥鶏(ポプラ文庫)

夏休みの空欄探し (ポプラ文庫 に 3-1)

クイズ研究会会長の高校2年生・成田頼伸(ライ)は、クラスで「じゃない方」と呼ばれている。同じ姓で、ダンス同好会所属の人気者・成田清春(キヨ)がいるからだ。「役立たない」ことが好きなライと、効率重視で「役立つこと」が好きなキヨ。対照的な二人は、夏休みの間、ひょんなことから、謎解きに挑む姉妹を手伝うことになる。謎解きの先で待つものとは――。すべての謎が明かされた時、切なさと温かさが胸を満たす、青春恋愛ミステリー。


クイズ研究会会長の主人公がファストフード店で隣に座った姉妹が悩んでいた暗号を解いたことから始まる、暗号ミステリ×ひと夏の青春冒険譚。
作者と暗号ミステリを目的で買ったら、まさか大好物のひと夏のボーイミーツガールが出てくるとは。
オタク気質で自己肯定感が低い主人公の変化、ひと夏の経験が一人の少年を人として成長させていく様子が丁寧に描かれた作品だった。
主人公ライは美人姉妹(主に妹の方)に自分の興味や趣味を肯定されたり、一緒に楽しい時を過ごして自分に自信を付けていく。暗号解読の旅に一緒に付いてくることになる苦手な陽キャなクラスメイトに対しても、相手と比べて自分を卑下するだけだったものが、相手の良いところや共通点を見つけ、積極的に会話したり頼ったりするようになっていく。そんな風に主人公がだんだんと段々と前向きになっていく過程がまさに青春だった。
また、暗号も予想以上に面白かった。ちゃんと読者にもフェアに出題される暗号解読が楽しい。
ただ、一つだけどうしても納得がいかないことが。
ヒロインの難病設定だけは本気で要らなかったと思う。
ボーイミーツガールのラストは甘いでも酸っぱいでも大歓迎なのに、これはただただ苦いだけ。少年の青臭い主張も甘酸っぱい恋模様も謎解きも全部楽しめていたのに、後味だけがとにかく悪い。
途中までは好みのど真ん中の作品でテンションマックスだったのに……本当に残念だ。