いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「幼なじみが絶対に負けないラブコメ3」二丸修一(電撃文庫)

沖縄でMV撮影ってマジ!? 女子たちの水着姿を見るチャンス到来か……! ヤバい、ハンパじゃないラブコメの波動を感じるぜ……! って、空港に現れた白草の雰囲気がいつもと違うんだけど!? ダメだって。節操なさすぎるって。私服姿を見ただけでトキメキすぎだろ俺。
でもでも? 黒羽とは喧嘩中だしー? またしても俺に嘘をついた黒羽が悪いんだしー?? いや、分かってるんだ。きっと何か事情があったんだろう。だけど、今回、俺は悪くない! 黒羽から謝ってこない限り、絶対に許さないんだからな!
海で、水着で、白草の逆襲が始まる!? 先の読めない、ヒロインレース第3弾!


沖縄旅行&群青同盟PV撮影編。表紙の通り白草のターン。
黒羽にしてもモモにしても計算高い女子が策を巡らせて、やり過ぎたり空回りしたりボロを出したりで、失敗することで笑いを誘ってくるこのシリーズ。なので基本的に笑いと一緒に「女の子って怖い」がついて来る。
それに対して白草は正攻法。ポンコツゆえに案の定失敗はするものの、アプローチがオーソドックスで怖さがなく、むしろ読んでいて安心感がある。まるで普通のラブコメみたい。
でも、その失敗が武器になっているのが、普通のラブコメとは一味違うところ。
情けない面と一生懸命さ見せることで、庇護欲を誘い好感度を上げてくるとは。本人が自覚していないので効果的に使えないのが欠点だが、攻撃力はかなり高い。素直になれないポンコツ美少女の白草では、計算高い他の二人には分が悪いと思っていたがこれなら戦える。
と、自ターンで無事に末晴の好感度を上げていったのは白草だったけど、読者の好感度を上げていったのは、志田家の双子の一人・蒼依ちゃんだった。素直さと一途さと気遣い、とても黒羽の妹とは思えない。こんなにいい子が泣くのは切ないなあ。女の子の裏表を怯えず平和に過ごしたいなら蒼依ちゃん一択だぞ、末晴。まあ、まるで見えてないんですけどね(^^;
さて次回は、物理的距離のアドバンテージをもらった白草が、それを生かせるのか墓穴を掘るのか? 他の二人の反撃は? 気になることがいっぱいで楽しみだ。

2/13の雑談

◆おニュー

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コンロが新しくなりました。

今までのはグリルの下が錆びて穴が開いてしまったので、使い続けるのは危ないってことで買い替え。
今度のやつはグリルにタイマーが付いていたり、熱くなり過ぎると止まる機能やが付いていたり、何かと安全対策が成されているそうで。
……はっきり言う。大きなお世話だ。
利益のために無駄機能やセンサーをつけて壊れやすく、また素人が治せないようにしてるんだろうなあ。車でもPCでも家電でも、昔ながらの単純な構造のものをそのまま使いたいとよく思う今日この頃である。


~使ってみて~
今日のところ突然止まることはなかった。取り付けてくれた人は強火の炒め物なんかの時に止まるかもと言っていたので、チャーハンの時にどうなるか。
あとは、グリルを洗うのがめっちゃ面倒になった(-ω-;)
今までは下の受け皿ごと一発で取れたのに、パーツがバラバラで取りにくいし洗いにくい。
日々使うものは使いやすさよりもメンテナンスのしやすさを重視した方が良いと思うんだ。見た目重視とか論外。
家もそう。新築やリフォームのTV番組を視ると、あのデカい/高い窓どうやって吹くんだろう?といつも思う。



◆早く寝てくれ

母の勤め先のあまりにも糞な対応に母がブチ切れ、延々と文句を言い続けている。私に、父に、電話で方々に。
自室に戻っても電話の話声がもろに聞こえてくる(興奮して声が大きくなっている為)ので、本は読み終わっているのに感想を書けるような環境にならない(´・ω・`)
嵐を過ぎ去るのを待つしかない。

「新宿もののけ図書館利用案内2」峰守ひろかず(メゾン文庫)

夏を迎えた『新宿本姫図書館』に現れた幼い利用者。市谷左内坂リシヤというその子供は、女に化けるのが上手い化狸の一族の少年だった。誰にも知られないように、拾った不思議な石のことを調べたいと言うリシヤの希望を叶えるため四苦八苦する詞織とカイルだが、それは想像を絶する代物で――。和装美女の於戸姫に、子供に優しい産女も登場、そして、カイルが図書館を……辞める!? 人間でない利用者たちのために奮闘する、もののけ図書館物語、第2巻。


新宿にある少し不思議な図書館の物語、第二弾。
新宿在住だった作家ってこんなに居るの? 流石は大都会。新宿近郊だけでこんなにポンポン妖怪ネタが出てくるということは、それだけ記録が残っているということだから、そこにも江戸の文化の高さと文化人の多さを感じる。
という真面目な話は置いといて、図書館を任されている若いお二人ですよ。
はあああぁぁぁぁぁ、癒される。
素直で一生懸命で真面目過ぎるカイルと、頼られると頑張っちゃうお姉さんな詞織。この二人が醸し出すほっこりほのぼのな空気がたまらなく好き。お互いに足りないところを補い合いながらの仕事風景は微笑ましく、テンパりがちなカイルをおっとりした詞織が落ち着かせるゆったりしたテンポは心地いい。作中の季節は夏だったけど、二人の間だけ春みたい。
その二人が運営する図書館は、利用者を絶対に差別しない姿勢と他人の悩みを真摯に聞く態度が好ましく、居心地のいい空間になっていて、ずっとここに浸っていたい気分。
また、利用者の妖怪たちも癖はあっても気のいい義理堅い人たちばかり。詞織とカイルのする親切に「ありがとう」が返ってくる話は読んでいて気持ちが良いし、その親切が巡り巡って二人に返ってくるストーリーも美しい。
このコンビ本当に好き。まだまだ読みたいので是非続いて欲しい。あんまり続くと詞織さんが人間離れしていくかもしれないけど。

「賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 痛 ~愛弟子サヨナと今回はこのくらいで勘弁しといたるわ~」有象利路(電撃文庫)

「クソっ、今回もダメだったか……ッ!」
担当編集は憤っていた。悪ノリで2巻が出てしまうこの『賢勇者』シリーズを王道ファンタジー路線に戻すべく、彼は時間遡行を繰り返し、未来を変えようとしていたのだ。
しかし、何度繰り返しても本作の主人公・シコルスキは、賢勇者というカッコいい肩書きなのに定期的に全裸になる変態であり、ヒロイン・サヨナは昨今のトレンドに反して胸が極薄で、性格がバブみから遠ざかっていくのだった。サブキャラも全員反社会的なサムシングだ。
「オレは、嫌なんだ! 全文検索で卑猥な単語がジャンジャン引っかかる下品な小説を編集するのは……! うおおおッ!」
果たして担当は未来を変えられたか!? その答えは今、君の手の中にある――。


出ちゃったよ2巻。何故またこれを流通にのせてしまったのか。
2巻も各方々に毒をまき散らしながら、一直線に駆け抜けていった。
しかし1巻以上に際どいところを攻めるのは流石に無理だったようで、1巻のインパクトを超えることはなかった。人とは一度慣れてしまうと、それ以上の刺激がないと満足できないもので、トーンダウンした感が否めない。それに業界にあれ以上切り込めなかった分、下ネタだけは強化されていたのもむしろ逆効果で、好みから外れて読むのがきつくなっていた。
サヨナのツッコミはもう初めから恥じらいがなく、投稿企画もイマイチ跳ねず、美人だったアデル母の挿絵と榎宮先生の生存確認ができたのは良かったけど、他はどうかなーと思いながら読み終わる……はずだった。
それがまさか、真・最終話にとんでもない爆弾が仕込まれていようとは。
人の写真で笑うのは失礼だけど、こんなところに出てきたら笑うわ! ネタの際どさ諸々含めて卑怯だ!
この手の作品で一回でも笑ったら負けだと思っているので、今回も負けです。ちくしょー

「石垣島であやかしカフェに転職しました」小椋正雪(LINE文庫)

新卒OLの東山葉月は旅行先で途方に暮れていた。勤めていた会社が、夜逃げ同然に倒産してしまったのだ。更に追い打ちをかけるかのように不思議な存在に絡まれた葉月だったが、通りかかった中年男性の室井俊郎に助けられる。彼によれば、葉月は『あちら側の住人』と意思疎通ができる『みえるひと』であるらしい。俊郎が『あちら側の住人』も顧客とするカフェを経営していると知った葉月は、その仕事を手伝うことを申し出る。
南の島を、元OLが駆ける。こちら側と、あちら側の住人を繋ぎ、時に助けられながら――


八丈島と、魔女の夏』の小椋さんがまた離島の話を書くと聞いて、とても楽しみにしていた作品は、期待通りに情景描写が美しく、優しさに溢れる物語だった。

石垣島の旅行に来たOLが、会社の倒産と不思議な出会いをきっかけに、島に居付くことになる物語。
エメラルドグリーンの海と、深い青の空。そこに映える緑の島々に、南国ならではの風土。ウッドデッキが素敵な喫茶店。美しい風景が容易に想像できる丁寧な情景描写が素晴らしい。そこに、元ブラック勤務の都会暮らしの主人公・葉月にとっては島のどんなものでも新鮮で、少しの違いに気付いて一つ一つ感動する様子が足されて、より美しいものに感じられる。
そう、この葉月さんのキャラクターが良かった。
抑圧されてきた反動なのか元来の性格なのか、おどおどしている割に好奇心旺盛で、神に妖怪に悪霊にと何でもありの“あやかし”たちに対して、驚きながらも臆せず話しかけていく度胸がある。また、困った人を見ると放っておけない性格で、危なっかしいけど好ましい人柄。
そんな彼女に引かれたのか、出会う人はこちら側の人もあちら側の人も、自分より他人を気遣ういい人優しい人ばかり(悪霊は除く)。ロック様(神)とか喋らなくて所作が可愛いからマスコットキャラみたい。筋肉だけど。
そして、そんな優しい人たちに助けられたり助けたりしながら、葉月が島での生活に馴染んでいって、たくましくなり笑顔が増えて行く様子に心が温かくなる。
青と緑が溢れる自然と主人公の頑張りに、心が洗われ優しい気持ちになれる一冊。良いものを読んだ。