いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「異世界転移、地雷付き。7」いつきみずほ(ドラゴンノベルス)

宝探しに人助け、ついでに悪人大成敗! パーティー“明鏡止水”、いきなり絶好調!!
ラファンに帰還したナオたちは、ゲルグという町のギルドから、不審な活動をする謎の団体、サトミー聖女教団への対応を依頼された。確かに街中では怪しげなやつらが跋扈し、風紀も乱れているようだ。そんな中、ナオたちは教団の仕業で家を失った幼い姉妹に出逢い、教団制圧に力を貸すことに。夢のスローライフは一旦お預け!? 本気モードの第7弾!


シビアな異世界を仲良し5人組で堅実に楽しく生き抜く異世界転移もの第7弾。7巻でた。よかった。
今回web版との一番大きな違いは、サトミー聖女教団の掃討にメイン戦力として関わったこと(web版は事後に現地入り)。
対人戦で躊躇なく攻撃できていることにらしくなさを感じるところはあるが、メアリたち姉妹の無念に自分たちの手で少しでも晴らせたのが良かった。web版では感じる、何もできない無力感も薄れたし。それにタイトル的にも最大級の地雷は自分たちで処理しないとね。
まあ、そんなことより虎耳姉妹ですよ。
幸薄健気かわいい。
本編ラストの挿絵の家族感がとても良い。メアリの火傷の位置の変更はイラストの都合ですね、わかります。
幼い口調で物事の本質を突くミーティア語録が大好きなので、この先の活躍にも期待したいところ。
あとは前回の錬金術に続き、web版ではご都合よく流してた魔法のレベルアップに理由付けしていったのも良かった。面白かったのは、そのエピソードでキャラが濃くなったイシュカさんの方だけど。
意外と不良シスターだったのね。今度から姐さんと呼ぼう← 多めの寄進に口の滑りが良くなる現金さ、ぶっちゃけ好きw
書き下ろしサイドストーリーは、一人で清く正しい異世界転移をしているサイ少年の話。
実力は劣っても女の子のためにここぞで体張って頑張る男の子、いいですねぇ。マッチョな仲間と合流したら裏切り者の烙印を押されそうだけどw その後の反応読むにはあと2巻は必要なのか……。
新たなクラスメイト?な謎の音楽家フラグも立っていたし、次も出ますよね?ね?
何としてもハルカ様のドレス姿が拝みたい。出来ればリア嬢のご尊顔まで。

「魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?15」手島史詞(HJ文庫)

魔王同士の決戦がようやく落ち着いたのも束の間、シアカーンによって作り出された数百もの〈ネフェリム〉たちの居場所としてザガンは新たに街を作ることに。
さらにザガンは愛娘のフォルに街を任せることを決意する!
「……わかった。私、やってみる」
初の大仕事に張り切るフォルのもとに、傷だらけで記憶を失った謎の少女もやってきて――
新たな波乱を予感させる、大人気ファンタジーブコメ第15巻!


前の巻でシアカーンやビフロンスとの決着がついて、新章突入!な15巻。
と言っても、その事後処理がメインで、新たな敵は顔見せ程度だっただったけど。
特に大きなウエイトを占めていたのが、シアカーンが遺していった多くの〈ネフェリム〉(復活させられた過去の偉人たち)。
シアカーンが逝っても彼らそのまま残るのね。ということは、キャラクターまた増えとるがな(^^; それでなくても把握しきれないというのに。人物紹介ページをあと2ページ増やしてください(切実)
そんなわけで、後処理と顔見せがストーリーとしての要点だった……はずなのだけど、
実情は、あちらこちらで好いた腫れたな会話が飛び交う甘味過多な日常回。いったい何組のカップルがいるんです? 事後処理に追われていたザガンとネフィのメインカップルの影が薄くなるくらい、あちらでもこちらでも恋の花が咲き乱れていた。これぞザガンファミリークオリティか。ツンツンだったお母様(アルシエラ)まですっかり毒されてしまって。最後に魔王vs魔王×2があったけれど、完全におまけでした、ええ。……この世界は既にゴメリ婆さんに支配されているのでは?
大変甘くて満足な話だった。。。あれ? おかしいな。娘・フォルが頑張るの回だったはずなんだけど。男女のペアじゃないと影が薄くなってしまうのこのシリーズの宿命か。

「僕たち、私たちは、『本気の勉強』がしたい。」庵田定夏(MF文庫J)

真面目すぎると言われる高校生、真嶋正太は夜が好きだ。田舎の小さな町で、身の丈にあった「普通」を過ごす日々。
でも夜はそんな自分でいなくてもいい、そう思っていた。ところがとある真夜中、こっそり侵入した「夜の教室」でいつも寝てばかりのクラスメイト・月森灯に出会ってから彼の人生は変わり始める。彼女曰く、勉強は全てを変えられるというのだ。勉強は世界に通じている。不可能を可能にする。こんな町からも外に出られる。
「もちろん、明日のテストでも簡単に満点をとれるわ」「えっ!?!?!?」
これは、夜から世界に挑む物語。真夜中×女子高生×勉強の新世代受験ストーリー、開幕!


夢追い人の父を反面教師に地道に分相応を心情にする高校生・真嶋正太が、睡眠障害の一種で夜にしか起きていられない天才少女・月森灯に夜の学校で出会ったことから始まる、受験勉強をテーマにした青春ストーリー。
真夜中の学校での逢瀬。少年の冒険心をくすぐりラブの気配も感じさせるシチュエーションなのに、やっていることはド健全な受験勉強というちょっとシュールな青春ラブコメ。そんな特殊な状況ながら、助けあったり衝突したりいい雰囲気になったり、上辺だけじゃない濃い友達関係を見せてくれて、ちゃんと青春してるのが面白い。
特に主人公の心情描写がいい。成績が上がっていく高揚と充足感、一度躓いた時の失望感とそこから生まれる疑心暗鬼、チャレンジしたい本心と苦労してきた母への申し訳なさ、色々な葛藤が渦巻いて激しく浮き沈みする多感な少年の心の内が丁寧に語られているところに強い青春感がある。
また、受験対策が意外とガチ。
受験に必要な能力を見定めてからの効率的な勉強方法に、試験問題に対する出題者の意図を読む考え方など、ただやらされている勉強、詰め込み式の勉強とは違う勉強方法が語られていて、それを読むだけでもためになる。
スローライフ」や「ざまぁ」など疲れた社会人向けの作品ばかりの昨今のラノベ作品の中で、中高生に薦められる、むしろ中高生にこそ読んで欲しいと思える作品。ラノベ業界全体に「こういうのでいいんだよこういうので」と言いたい。スローライフもざまぁもうんざりだ。

5月の読書メーター

読んだ本の数 :9
読んだページ数:2718

忘れてたので偽装更新です/(^o^)\



今月のベスト2
「学園の聖女が俺の隣で黒魔術をしています」和泉弐式(電撃文庫



「お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件6」佐伯さん(GA文庫

「高嶺の花には逆らえない」冬条一(ガガガ文庫)

佐原葉は、学校一の美少女・立花あいりに一目惚れをした。イケメンな友人・進藤新に相談をすると、告白のセッティングをしてくれることに。伝えられた場所に行くと、そこにはあいりに告白をする新の姿が。友人に裏切られ、好きな人を目の前で奪われた葉は、ショックでその場を逃げ出してしまう。翌日、教室に入ると新はなぜかスキンヘッドになっていた。さらに、恋人がいるはずのあいりから積極的にアプローチをされるように!? 好きな女の子が、なんだかヤバい! 謎多き高嶺の花と織り成す、ゾクゾク必至の新感覚ラブコメ!


両片想いで勘違い/すれ違いなヒロインと、垢抜けない子を美少女に育てあげるプリンセスメーカー的なヒロインのダブルヒロインで送る、変化球な三角関係ラブコメ
鈍感無自覚主人公の特性の最大限に活かして、本来合わさることのない要素を繋ぎ合わせた挑戦的な作品。超絶美少女とおデブちゃん、普通なら勝負にならなそうな二人が、主人公の鈍感具合とそれぞれの持つ残念さで、いいバランスで(むしろおデブちゃん有利で)鎬を削り合っている状態が、甘酸っぱいのに笑えるという不思議ワールドを味わえる。
と、それだけなら楽しいラブコメだったと躊躇いなく言えたのだけど、首を傾げざるを得ない要素が一つある。それが級友のイケメンどクズの存在。流行りの「ざまぁ」要素を入れたかったんだろうけど、ラブコメに「ざまぁ」は必要か? この作品にここまでのクズが必要か?
このクズに関わっていた所為で、パッケージヒロインの立花さん(美少女の方)の出番と魅力が大きく削がれてしまっている。おデブちゃんヒロイン武田さんの魅力は十全に伝わって来ていただけに、立花さんも同じ条件で戦わせてあげて欲しかった。三角関係ラブコメの楽しさをわざわざ半減させている気がしてしょうがない。
それでも、相手がぎゃふんと言うまでやり切ってくれればまだスカッと出来たのだろうけど、主人公が中途半端にいい子ちゃんしてなあなあになってしまった為に、クズ野郎が息を吹き返してしまって、読後感の悪さと言ったらない。
コンセプトは面白かったし、ある程度成功していたと思う。それだけに『ざまぁ』要らねという想いを強くした作品だった。