いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「義妹生活7」三河ごーすと(MF文庫J)

兄妹になってから初めての年越しで思い出を振り返りながら距離を縮めた悠太と沙季。
親戚付き合いを経て、誰からも歓迎される関係の難しさを実感しつつも沙季は悠太との触れ合いを求めるようになっていく。
バレンタイン、海外への修学旅行、旅先での新たな出会いと気づき。
特別なイベントにもかかわらず、家の外で過ごす時間は、二人にとっては逆に恋人らしい交流ができず、距離を感じるもどかしい時間でもあった。
そして『自分本位の幸福の追求』という価値観に触れたとき、自身の想いを抑圧しがちだった二人はある行動を起こす――。
“兄妹関係”から恋人への階段をのぼっていく、等身大の二人を描いた恋愛生活小説、第7弾。


バレンタインに修学旅行、イベント目白押しな第7巻。
冬休みだったこともあり二人で一緒に居た時間は前巻の方が長かったけれど、気分の盛り上がりは断然今回の方が上。
とは言っても、バレンタインは静かなものだった。最後に沙季がちょっとズレたヤキモチを見せたくらいで、イベントだからと特別盛り上がることはない様子に、この二人らしいなと苦笑していたくらい。
それが一転したのがシンガポールへの修学旅行。
クラスが別な二人は行き先は一緒なのに会う機会がない。これまで朝と夜には必ず顔を合わせていた二人には、丸一日会えないのは初めての経験。そのたった一日が二人の恋心にこれまでにない火を点けたのか。特に沙季の方の変化が劇的だった。
友達の真綾に背中を押されてだけど自ら連絡して自分の希望を伝えたり、自分の独占欲と嫉妬深さを知って悶々としたり、現地で出会った同棲同年代のミュージシャンの独特な恋愛観に触れて動揺したり、会えた喜びを全身で表したり。これまで感情を押し殺していた彼女とは思えないほど、表面も内面も揺れ動いて感情表現が実に豊かだった。自分で感情を制御しきれないままならなさ、という恋愛ものの醍醐味を、これまでとのギャップもあって通常の何倍も楽しめた。
そんなわけで、今回は珍しく沙季の心情がメインに語られる回だった。今度は悠太が変わる番になるのかな? 予告にある、関係を見つめ直す「すり合わせ」が少し怖いが。この子たち極端に走りがちだからなあ。

「変人のサラダボウル4」平坂読(ガガガ文庫)

瞬く間に人気を博しメジャーデビューを決めた救世グラスホッパーだったが、メンバー皆神望愛の逮捕によりこれまた一瞬で転落してしまう。弁護士の愛崎ブレンダはそんな望愛の弁護を引き受けることになり、惣助や閨たち探偵にも協力を依頼するーー。ジャンル分け不能のおもしろ群像劇、今度はいきなりリーガルミステリーに!? 一方、再び居場所を失ってしまった元女騎士のリヴィアは新たな寄生先と巡り逢い、中学生になったサラは友奈と一緒に楽しく学校生活を送るのだった。岐阜の街は今日も混沌と平常運転です。


中学一年生のバス旅行と、マジもんの賭場に行ってほんまもんの人とやり合う銀髪女性と、真面目な裁判の様子が一冊に収まっている、全体的に塩分過多なライトノベル。……脳がパニック! タイトルに相応しいカオスっぷりを見せつけてくる4巻。
今回のお気に入りはサラ様パート。
中学に入ってもコミュ力無双しているサラ様の様子もさることながら、バス旅行前から繰り広げられる熱い飛騨上げと熱い飛騨下げの応酬がジェットコースターのようで面白い。外の人間にとっては上げのご当地自慢と下げのご当地小話のどちらも興味深い。笑えるのはもちろん下げのぶっちゃけトークだけど。でも漬物ステーキはないわ。塩分的に。
一方、元従者のリヴィアは相変わらず裏社会街道を驀進中。
最早ハラハラ感はなくなってしまった。代わりに今度はどんな変わった女性を引っかけてくるのかが楽しみになって来た。それでも、車イスで余命幾ばくも無いの半グレのボスって属性盛り過ぎだろ! 常に期待の斜め上(斜め下か?)を行ってくれるリヴィアさん流石です。この主従、人たらしなところはだけはよく似ているわ。
また、忘れちゃいけないのが裁判の様子。
残念赤毛ロリ先生が、以外にも真っ当に有能さを発揮した。この人、本当に敏腕だったんだ。というか本当に本物の弁護士だったんだw 結果はアレだったけど格好良かったです、ブレンダ先生。オチはその働きのご褒美?
今回はいつにも増して惣助の影が薄いと思っていたら、最後にとんでもない爆弾が。次回は三角関係(+友菜)で荒れること必至!

12月の読書メーター

読んだ本の数 :9
読んだページ数:2978


読書メーターの今月のデータの数字がバグってるんだが大丈夫か?(^^;
月平均の冊数とページ数だけおかしいから、31日の月は毎回バグってるのかもしれない。



今月のベスト2
「Unnamed Memory -after the end- II」古宮九時(電撃の新文芸)



「義妹生活7」三河ごーすと(MF文庫J

今年のお気に入り

今年の読んだ本は




124冊(漫画雑誌等除く)でした。





がっつり減った去年からさらに30冊近くの減少。一昨年からだと約70冊減。
ラノベ業界が出版数の増加に反比例するかのように急速に多様性が失われてしまっているので、どんどん食指が動かなくなっている。来年は100冊も危ういかもしれない。
そんな中でも「まだまだラノベも捨てたもんじゃない」と思わせてくれた今年の推し作品をいくつかご紹介。



「オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!」コイル(電撃の新文芸)

 


主人公・咲月のポジティブシンキングでタイトルの「毎日がメッチャ楽しいんだけど!」を全力で体現していく、読んでいるだけで幸せな気分をお裾分けしてもらえるご機嫌な作品。濃いめのオタク知識が必要なので読む人は選ぶけれど、是非とも多くの人に読んでもらいたい幸せいっぱいなラブコメ




「Unnamed Memory -after the end-」古宮九時(電撃の新文芸)

 


運命に抗う王と魔女のファンタジー、延長戦。
課せられた使命、待ち受ける運命は相変わらず過酷。でも、それを乗り越えていくからこそ最強夫婦が光り輝く。お互いへの信頼、深い愛情、二人でいる時のイチャイチャ。どれもが楽しみ。




「義妹生活」三河ごーすと(MF文庫J

  


親の離婚を経験している者同士、その傷を自覚しながらゆっくりじっくりお互いを理解してようやく恋人同士になった5巻。その幸せを噛みしめた6巻と7巻。
静かでじんわりと染み入るような恋愛模様は、今年一番美味しいところだったのかも。




「変人のサラダボウル」平坂読ガガガ文庫

  


日本の小中学校生活に浮かれる金髪少女と、裏社会にずぶずぶとハマっていく銀髪女性と、岐阜ご当地自慢と、その他諸々が一冊に収まったカオスな群像劇。「なんでもあり」のライトノベルをこれ以上なく実現しながら破綻なく面白いのは最早奇跡。




「小説が書けないアイツに書かせる方法」アサウラ電撃文庫


ド変態たちが蔓延るド下ネタエロコメディ。フランス書院か?と思わせる濃密なエロ描写がありつつ、創作ものの青春小説として文句のないクオリティを誇る、股間は硬くなり胸は熱くなる怪作にして傑作。
人気アニメ『リコリス・リコイル』の短編と同時発売して隣に置かせるレーベルの性格の悪さも必見w




「レンジャー・ガール! 女性自衛官・小牧陽は地獄を這い進む」綾坂キョウ(富士見L文庫


極限状態で生まれる素の感情剥き出しの人間ドラマ。
訓練なのに『死』が間近に見える壮絶なレンジャー養成訓練。その中で生まれる友情や愛情なんて生易しいと思わせる、命を預けられる信頼までに育まれていく過程が涙無くしては読めない。





以上!

来年はテンプレなぞる作品、テンプレを弄る作品ではなく、もっと個性溢れる作品に数多く出会いたいものです。
それでは皆様、良いお年を。

「Unnamed Memory -after the end- II」古宮九時(電撃の新文芸)

「永らくお待たせいたしました、王よ。貴方の魔女です」
世界外から来た呪具を破壊するため、大陸中を旅するオスカーとティナーシャ。けれどその一方で、かつての祖国ファルサスには不穏な影が生まれつつあった。
突如、隣国を侵略したファルサス国王ディスラルは、城都に来ていたティナーシャを見つけると、王家の直系魔法士たちを殺すよう命じる。それは宮廷を揺るがす凄惨な事件の幕開けで――。
歴史の陰に葬られる逸脱者の戦いが、今語られる。


不老であり、死んでもまた生まれ変わるオスカーとティナーシャ。人の理から外れた王と魔女の物語、第二幕。
前回の後半でオスカーの生まれ変わりを待つティナーシャが描かれたが、今回はその逆。転生するティナーシャを待ち探すオスカーの様子が描かれる。また、魔法大陸は丁度、同舞台の別作品『Babel』の時代。作者のファンには嬉しい世界の広がりが感じられる一冊になっている。

流石はオスカー王。ティナーシャのように取り乱さないし暴走もしないで冷静そのもの、表面上は。ティナーシャ不在時の生気を感じられない生活や、見つけてからの時々忙しない様子など、いつも泰然としている彼らしくない姿に、彼の中のティナーシャの存在の大きさが感じられて嬉しい。
一方、亡国の姫として囚われの身のリースヒェンとなったティナーシャ。類稀な魔法力の彼女を取り込むべく色々な誘惑がある中で、迷うことなく真っすぐとオスカーを選ぶ様子に、強固な結びつきというか魂が惹かれあっている感じがして、こちらも嬉しくなる。一応、リースヒェンに近づく男性の誰がオスカーがわからないような書き方だったけど、ナークの動きでバレバレという。あの忠犬ミニドラゴン(大)も変わらず可愛い。
ティナーシャが合流した後半は本題の呪具探し。……なのだけど、どうしても途中途中で挟まれる夫婦の掛け合いに目が行ってしまう。まあ、ほぼそれが目的で読んでいるのだから仕方がない。中でも、東の大陸での拠点の改装、魔法でお手軽リフォームは新婚さん感が出ていて好き。全然新婚じゃないけどw
それにしても本題の方がまるで進まないな。今回は本編ラストで猛威を振るったあの呪具の付属品を一つ壊せただけで、呪具が一つも減っていない。彼らの旅路はまだまだ長そうだ。