いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「Unnamed Memory -after the end- II」古宮九時(電撃の新文芸)

「永らくお待たせいたしました、王よ。貴方の魔女です」
世界外から来た呪具を破壊するため、大陸中を旅するオスカーとティナーシャ。けれどその一方で、かつての祖国ファルサスには不穏な影が生まれつつあった。
突如、隣国を侵略したファルサス国王ディスラルは、城都に来ていたティナーシャを見つけると、王家の直系魔法士たちを殺すよう命じる。それは宮廷を揺るがす凄惨な事件の幕開けで――。
歴史の陰に葬られる逸脱者の戦いが、今語られる。


不老であり、死んでもまた生まれ変わるオスカーとティナーシャ。人の理から外れた王と魔女の物語、第二幕。
前回の後半でオスカーの生まれ変わりを待つティナーシャが描かれたが、今回はその逆。転生するティナーシャを待ち探すオスカーの様子が描かれる。また、魔法大陸は丁度、同舞台の別作品『Babel』の時代。作者のファンには嬉しい世界の広がりが感じられる一冊になっている。

流石はオスカー王。ティナーシャのように取り乱さないし暴走もしないで冷静そのもの、表面上は。ティナーシャ不在時の生気を感じられない生活や、見つけてからの時々忙しない様子など、いつも泰然としている彼らしくない姿に、彼の中のティナーシャの存在の大きさが感じられて嬉しい。
一方、亡国の姫として囚われの身のリースヒェンとなったティナーシャ。類稀な魔法力の彼女を取り込むべく色々な誘惑がある中で、迷うことなく真っすぐとオスカーを選ぶ様子に、強固な結びつきというか魂が惹かれあっている感じがして、こちらも嬉しくなる。一応、リースヒェンに近づく男性の誰がオスカーがわからないような書き方だったけど、ナークの動きでバレバレという。あの忠犬ミニドラゴン(大)も変わらず可愛い。
ティナーシャが合流した後半は本題の呪具探し。……なのだけど、どうしても途中途中で挟まれる夫婦の掛け合いに目が行ってしまう。まあ、ほぼそれが目的で読んでいるのだから仕方がない。中でも、東の大陸での拠点の改装、魔法でお手軽リフォームは新婚さん感が出ていて好き。全然新婚じゃないけどw
それにしても本題の方がまるで進まないな。今回は本編ラストで猛威を振るったあの呪具の付属品を一つ壊せただけで、呪具が一つも減っていない。彼らの旅路はまだまだ長そうだ。