いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「カササギたちの四季」道尾秀介(講談社文庫)

カササギたちの四季 (光文社文庫)
カササギたちの四季 (光文社文庫)

リサイクルショップ・カササギは今日も賑やかだ。理屈屋の店長・華沙々木と、いつも売れない品物ばかり引き取ってくる日暮、店に入り浸る中学生の菜美。そんな三人の前で、四季を彩る4つの事件が起こる。「僕が事件を解決しよう」華沙々木が『マーフィーの法則』を片手に探偵役に乗り出すと、いつも話がこんがらがるのだ……。心がほっと温まる連作ミステリー。

「解説:米澤穂信」の文字に釣られて購入。直木賞作家だったことに気付いたのはその後(おい



リサイクルショップを舞台にした短編連作形式の日常ミステリ。
いつも真相を間違える迷推理が光る華沙々木と、それを影でサポートする名助手の日暮のコンビで、「やさしい嘘」をテーマに春から冬の四編で語られる。(過去の事件の話がちょくちょく出てくるので続きものなのかと思ったら、その事件は秋に収録されていた。なのでこの一冊で問題なく楽しめる。)


あまりミステリって感じはしないけど日暮の優秀さと華沙々木の滑稽さ、そのどちらも好ましくどの話も楽しく読める。ただ、日暮ばかりが割食っているのと、優しさというより甘やかしに近いのが雑味、ちょっと嫌な感じがするかな。
と、秋の章まではその程度の感想しかなかった。
これが冬の章で一変。
まずは各章の冒頭で出てきていた強欲和尚。これが実際に出てきたら何とも味のある好人物で、日暮たちや息子への言葉が胸を打つ。
また、好き勝手やっているだけだった華沙々木の優しさもここで初めて見えて、華沙々木の印象が変わった。
そして、極めつけはいつも二人にくっ付いてくる菜美ちゃんの思わずハッとさせられる一言。
ミステリっぽくないなと思っていたのに、こんなところでどんでん返しを決められるとは。華沙々木さんピエロですやん。
優しさの中に残酷さが潜んでいる、それが「やさしい嘘」の本質なのかも。