いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「満願」米澤穂信(新潮社)

満願
満願

人を殺め、静かに刑期を終えた妻の本当の動機とは―。驚愕の結末で唸らせる表題作はじめ、交番勤務の警官や在外ビジネスマン、美しき中学生姉妹、フリーライターなどが遭遇する6つの奇妙な事件。入念に磨き上げられた流麗な文章と精緻なロジックで魅せる、ミステリ短篇集の新たな傑作誕生。


ダークな雰囲気と後味苦め。青春がない時の米澤作品らしさが詰まっている短編集。
最近は自称ミステリ・ミステリ風味の作品ばかり読んでいたので、ミステリ的思考を思い起こさせてくれたのと、読み終わった時に「なるほど」や「そうか」と思わせてくれるミステリらしい楽しみ方が出来て、大変面白かった。



以下各話毎一言



夜警
内容:殉職した巡査が発砲した真意とは。
全くタイプは違うが極端から極端に走る小心者の男三人が印象的な話。
とんでもない真相には説明で納得できたが、どうして彼が警官に成れたのかという謎が残った。




死人宿
内容:自殺の名所近くの宿での一幕。
彼女の落胆に心を入れ替えた彼が見事に謎を解いてハッピーエンド。……にはしないのが米澤流。しかもちゃんとヒントが出ているのがにくい。後味苦めの真骨頂。




柘榴
内容:離婚調停中の両親の間で娘たちがとった行動とは。
…………(絶句)
女は生まれながらにして女。だから女性は怖い。というのはよーく分かった。
オチがあまりにもえげつない。これはちょっと苦手。




万灯
内容:ガス田開発における現地村でのトラブルの行く末。
脱力感と遣る瀬無さが入り混じるというのは初めての体験だ。
ここまで来ると因果応報の一言で片付けていいものか分からなくなる。それにしても一話目の「夜警」の登場人物たちとは対極の主人公だ。




関守
内容:事故が多発する伊豆の峠近くのドライブスルー。
唯一、犯人と犯行方法が読めた作品。
読めてしまっただけに最後の「……」の描写が怖い。




満願
内容:弁護士(主人公)の初めての担当事件で被告が控訴を取り下げた理由とは。
最後もまた女性が怖い話ですか。
その人にとって何が一番大切なのか、他人には計り知れない。