いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「憧れの作家は人間じゃありませんでした」澤村御影(角川文庫)

憧れの作家は人間じゃありませんでした (角川文庫)
憧れの作家は人間じゃありませんでした (角川文庫)

憧れの作家・御崎禅の担当編集になった瀬名あさひ。その際に言い渡された注意事項は「昼間は連絡するな」「銀製品は身につけるな」という奇妙なもの。実は彼の正体は吸血鬼で、人外の存在が起こした事件について、警察に協力しているというのだ。捜査より新作原稿を書いてもらいたいあさひだが、警視庁から様々な事件が持ち込まれる中、御崎禅がなぜ作家になったのかを知ることになる。
第2回角川文庫キャラクター小説大賞《大賞》受賞作。

なんか性格といい立ち位置といい第1回の大賞作と似たような女性主人公だなあ。審査員がこういうタイプが好きなのかな? 但し、こちらのあさひちゃんには映画オタク(というより行き過ぎて映画馬鹿)という強烈な個性があったけど。
作品のタイプとしてはミステリー風の短編連作形式。人外が起こす事件の捜査する、警察に協力する吸血鬼の作家と若手刑事に主人公の新任女性編集者が同行する話で、このタイトルながら物書きや編集者の仕事よりも事件とその捜査がメイン。
とまあ、大変よくあるタイプの作品ではあるが、物語の造りをテンプレにした分キャラクターを魅せることに注力しているのが好印象。なにせキャラクター小説大賞なので。
まずは主人公のあさひ。
基本がネガティブ思考なのが玉に瑕だが、その弱々しさとは裏腹に何事にも一生懸命な姿勢が全身から出ていて何だか応援したくなるキャラクター。また映画の話になるとスイッチが入ると止まらなくなるところや、涙もろいところなど、所々に感情的な面を見せてくれるところもチャームポイント。
お相手?の吸血鬼作家の御崎は、能力は万能、顔も性格もイケメンと完璧超人で面白みがないキャラから次第に完璧の仮面が剥がれていく過程が良い。特に小説を書いている理由や吸血鬼になった理由がわかり弱さを見せる三話目の彼は大変魅力的。
その脇を固めるキャラ達もチャラい刑事にオネエ狐など個性たっぷりで、やな奴をとことんやな奴として書ききる力もあり、キャラクター小説大賞に選ばれて納得の作品だった。
好みの問題だし比べるものでもないけれど、第1回大賞作よりかなり面白かった。2年連続ハズレならこの賞はもう追いかけないつもりでいたけれど、来年も追いかけよう。