いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「これは学園ラブコメです。」草野原々(ガガガ文庫)

俺の人生、なんだかラブコメみたいだな。主人公である高城圭はそう思った――。
そうだ! お前はラブコメの主人公であり、SFとかファンタジーとかそんなジャンルのキャラではない! だから大人しくラブコメらしい展開に従ってくれえええ! 嘆くその影は言及塔まどかこと、虚構を司る力が擬人化された存在。そう、これは、まどかと圭が七転八倒しながらラブコメの世界をSFやらファンタジーの浸食から守り抜く物語。SF界の超新星が描く、ハイテンション×メタフィクション学園ラブコメ開幕! って、俺の高校生活、一体どうなっちゃうの~~!?


なんて実験的な、と思ったら自ら実験作って言っちゃってるよ! しかし、このあとがきの使い方は新しい。間違いなくガガガ文庫でしか出せない作品なのは間違いない。(大事なことなので二(ry
これは学園ラブコメではなく、学園ラブコメを書きたかった作品ではなかろうか。よくある頭の中で天使と悪魔がささやく描写をスケールアップさせた、小説家の脳内をそのまま小説にしてしまったような作品。
学園ラブコメを書きたい小説家がプロットに悩んでいる時に、どこからかファンタジーが入り込みSFが紛れ込み、ホラーやミステリまでも忍び寄ってくる。そして収拾がつかなくなってくると、なんでもありという禁じ手の誘惑が迫ってくる。といった、こんがらがってしまった頭の中を、メタフィクションとしてそのままアウトプットされている。
というかこれ、なんでもありの誘惑に見事に負けちゃってますよねw
何が起こるかわからない面白さがありつつ、思考が飛びまくりで気持ち悪さも付きまとう、読む人を選ぶ怪作。思った通り癖が強くて思ったより美味しいけど、二回目はもういいかなと思う、ゲテモノ系珍味の類。