いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「のけもの王子とバケモノ姫」平尾隆之(富士見ファンタジア文庫)

長大な壁で外界を拒絶した人間の国イエール。不治の感染病にかかった第三王子シュウは、壁の外に追放されてしまう。そこは異形の民モール族が生きる荒れ果てた大地……未来に絶望するシュウ。そんな彼に手を差し伸べたのは、モール族でも異端の美しさを持つ王女ミサキで――「ひとつだけあるわ。お前の居場所になるかも知れないところが」
新天地で出会う彼らの文化や生態にシュウは驚き、魅了され、いつしか人間とモール族が共に生きることこそが希望だと気づき!? ふたつの種族の間に横たわる大きな『壁』に、それぞれの異端のふたりが立ち向かう、王道冒険ファンタジー

原因不明の奇病に罹り国外へ追放された人間の王子と、人間に近い容姿の所為で厭われている亜人の国の王女のボーイミーツガール。


これはいい。古き良きライトノベルを読んでいる気分だった。
懐古厨でもいいじゃない、おっさんだもの(開き直り
キャラデザを含め昭和の冒険アニメを思わせるような純ファンタジーな世界で繰り広げられるボーイミーツガールで、初めて国の外に出た王子が次々と新し事に出会う冒険のワクワク感あり、過酷な運命を自分の手で切り開こうとする成長譚あり、悪役が分かりやすく悪役していて勧善懲悪な面もある、読んでいて純粋に楽しい王道のファンタジー。地の文を少し噛み砕けば児童文学でも行けそう。
そこに、濃いめのキャラ設定におふざけのネタで度々笑わせてくる軽さとノリの良さという、ライトノベルらしい味付け。こういうのでいいんだよ。他のとの差別化ばかり意識して、奇をてらい過ぎな作品が多い中で、こうして王道を突き進む作品に出会えたことが嬉しい。
王子の戦いと、国を追い出された人々の革命は始まったばかり。人間の国の闇、主人公が罹った病気の謎、亜人の王は何か知っているらしいこの世界の謎と、明かされていないこともいっぱいあるので、続きがとてもが楽しみ。