いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「居酒屋がーる」おかざき登(LINE文庫)

片菊嘉穂は今日も馴染みの居酒屋『竜の泉』のカウンターで日本酒をたしなんでいた。嘉穂の頼んだ料理が運ばれてくると、それを隣で見ていた女性が「おいしそう。私もそれください! 」と頼み、さらにその隣に座っていた女性も「わたしも便乗させてもらってもいいですか」?と続けて頼む。ところが、それが最後の一皿だったので、残念がる二人。「もしよかったらシェアします」?と嘉穂が持ちかけ……。それが『竜の泉』を舞台にした三人の女性、片菊嘉穂、七瀬美月、新藤貴美の物語の始まりだった。


お腹が鳴りました。
お酒と料理の描写に特化した居酒屋小説。 
もちろん人間ドラマがないわけではないけれど、三人の女性がお酒(主に日本酒)と料理の組み合わせについて真剣に考察するのがメイン。なので、お酒の描写は見た目から香り、温度、飲み口、後味と事細か。料理の方も同様の細かさで、そこに素材の薀蓄が入ってくる。しかも、ザ・酒の肴という料理が多いので、呑兵衛にはたまらない。そういえば、ちょっとした愚痴や人情噺も、つまみの一つのだな。なんだか、すべてが酒を飲ませるために書かれているような気がしてきた。
どの話も美味しそうで羨ましいのだが、個人的なNo.1は「第七話 鯖づくし」。刺身に炙りにリュウキュウ……それが無口な店主が自らオススメしてくる一品ってのが卑怯だ。現地じゃないとなかなか食べられないホヤ(第九話)も捨てがたい。
話として好きなのは「第五話 牛すじの煮込み」。新人社会人の貴美が、見知らぬ男性相手でもちゃんと自分の意見が言えているところと、その後正体を知って大いに赤面する可愛らしさ。どちらも良い。
最高の飯テロ小説だった。

しかし、お酒が出てくる読みものは、どうしてこうも日本酒に偏るのだろう。どこかにガチ焼酎党の作家さんはいらっしゃらないのだろうか。