いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 子ども食堂と家族のおみそ汁」友井羊(宝島社文庫)

スープ屋「しずく」のシェフ・麻野は、ある日、子ども食堂の運営の協力を頼まれる。子ども食堂で麻野たちが出会ったのは、さまざまな傷を抱えた親子たち。ふさぎこむ少女が抱える秘密とは? 引き離された父子に何があったのか? 少女の家で起こる怪奇現象の真相は? 美味しいスープと鋭い推理で、彼らの問題を解決していく麻野。そして麻野自身も、幼い頃に負った傷と向き合うことに――。


スープ屋しずくの謎解き朝ごはんシリーズ第5弾。
今回は少し毛色の違う話だった。違う点は、一話完結ではなく一冊で一つの話だったこと。子ども食堂児童相談所がずっと関わってくる子供がメインの話だったこと。そして人様の問題に深入りすること。
恵まれない子供や問題を抱えた家庭はこれまでも度々出てきたけれど、麻野、露、理恵の三人がここまで積極的に関わることになるのは恐らく初めて。それだけ、どの子、どの家庭の問題も深刻で遣る瀬無くなったし、身につまされる話もあった。
ただ、なぜこの話をこのシリーズでやったんだろう、という想いは少しある。麻野と母の関係を見直すにしても、丸々一冊やらなくてもと思ってしまう。スープ屋しずくは疲れた大人が、一息付けて少し救われる、そんな場所であってほしいので。今回は、スープは相変わらず美味しそうで身体も心も温まりそうなのに、問題が一つ一つが重く数珠繋ぎで、ホッとする間が無いのがとても残念。
それでも、嬉しいこともあった。
それは理恵が自然に麻野親子に寄り添っていたこと。特に普段大人びた露ちゃんが彼女に対してだけわがままを言うのが可愛くて、こんなにも距離が近くなったのかと感慨もひとしお。
また、今回の一押しスープは断然、麻野家でいただいていたお味噌汁。最高の素材と最高のシェフ、最強の味噌汁にも程がある。しかも、周りが問題あり家族ばかりの中での穏やかな食卓の風景であり、その一家団欒に理恵が入っているという幸せがあり、今回唯一ホッとできる瞬間だった。
一先ずこれで麻野の周りは落ち着いたのかな? とすると次は理恵の番か。そういえば、理恵の家族の話は出てきた記憶がない。何にせよ、理恵さんの幸せを願うばかり。