いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「翼の帰る処 番外編2 ことば使いと笑わない小鬼」妹尾ゆふ子(幻冬舎コミックス)

かつて帝国に滅ぼされた沙漠の都市国家アルハン。その元王子で、水を浄化する力を持つファルバーンは、大貴族《黒狼公》となった尚書卿ヤエトに正式に召し抱えてもらうため博沙国を訪れるが、そこにヤエトの姿はなかった。目的を失い無為の日々を過ごす中、博沙相からアルハンの水源調査を依頼されたファルバーンは、北嶺から借り受けた鳥に乗って、なぜかやって来た皇女、鳥の世話役アルサールらとともにアルハンの呪われし廃墟、地下迷宮に向かうが――!?
表題作ほか、ヤエトの養子・キーナンの学園生活をコミカルに描く「ヘルムデル先生の帽子」、目覚めたヤエトのもとにオールキャラ勢揃いで押しかける本編の後日談を同時収録!!


お前らヤエト大好きかよ!
と、叫びたくなるくらいヤエト愛に溢れた番外編2。
主にヤエトが目覚めた直後を描いた最後の短編に対するコメントだが、あと二編―ファルバーンが主人公の長編にも、養子キーナンが主役の中編にもヤエトに対する親愛に溢れていた。あの人、出てない時の方が存在感あるんじゃないか?
まずはファルバーン主役の長編。
巻き込まれ体質といい自己評価の低さといい「やれやれ」感といい、ファルバーンがヤエトにそっくりでびっくり。諦めからくる覇気の無さは感じていけれど、何でも器用にこなす万能選手のイメージだったからこの自己評価は意外だ。
でもそんな、ある意味「ヤエト役」がいたおかげで皇女との会話が楽しいこと。沙漠に伝わる説話に対しての感想を語り合うシーンが特に好き。同じ説話を聞いても感心を向けるところも思うことも人それぞれ。それを肯定してくれる話の流れと姫様らしい実直で男らしい感想に嬉しくなる。
しかし、姫様。何でもヤエト基準で考えてヤエトと比べてしまうのはどうでしょう。ファルバーン相手なら問題なくても、父君や兄君相手にやるとヤエトの首がまた危なくなるような。ベタ惚れなのは分かりますがw
キーナン主役の中編は学園生活苦労譚。
ヤエトに出す手紙の内容で悩むキーナンというシチュエーションだけですでにヤエト愛が出ているが、ヤエトの教えがキーナンに息づき、他の人の心を動かすストーリーはヤエト愛が極まっている。これがあんなにも慕われる一端か。
それにしても、キーナンの気苦労の多さ。養子にもその特性がしっかりと受け継がれてますね(苦笑)
今回もとても面白かった。まだまだ知りたいエピソードはいっぱいあるが、流石にここらで打ち止めだろうか。