いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「吸血鬼に天国はない (3)」周藤蓮(電撃文庫)

「お兄ちゃんも真面目に生きて、天国を目指そうって気になってきたんですか?」
個人でやっていた運び屋を、会社として運営し始めて早一月。恋人のルーミー、そして社員として雇い入れたバーズアイ姉妹たちとともに仕事を回す日々。経営は苦しいながらもシーモアは、情報屋のフランから「真面目」とからかわれるような幸せに浸っていた。
だがある日シーモアのもとに捜査官から、ルーミーのもとに殺人株式会社から、脱獄した『死神』の捕獲・討伐に協力するようそれぞれ秘密裡に依頼が入る。
一方、『死神』の手による連続殺人事件が巷を騒がせるようになり、街は徐々に無秩序がはびこるようになっていた。はからずも同時期、街には新たなる怪異が産声を上げようとしていて……。


表では運送会社の運営が始まり、裏では『死神』の捜査に駆り出されるシリーズ第3弾。
意志の力が強かったり狼男がいたり、思った以上にファンタジーな世界なんだなと。吸血鬼がいるのに今更なんだけど。
そしてフランケンシュタインの話題も出てきてた時にふと思った。シーモア怪物ランドのプリンスなのでは? かわいこちゃんに弱いし、毎回怪物を呼び寄せてるし、考えることが多すぎて頭から煙が出ているから、いつ大噴火してもおかしくない。後は念力が使えるようになれば完璧だ。
……という冗談はさておき、
今回は人間界の怪物の在り方を見て自分たちの関係を見直す話。話の作りとしては2巻に似ているが、今回の方がしっくりきた。人の世界に馴染めない『死神』が懸命に寄る辺を作ろうとしている姿が、二人の姿にぴったり重なった。シーモアとルーミーはこれを、二人の関係性に求めているのだと。愛とか恋とか目に見えない不確かなものの形を、一つ一つ似せて作ってはその形を確かめていく作業をしているのだと。そんな地道な作業の過程にしては、街や人間社会への被害が凄いことになっている気がするけれど。まあ今回は大体『死神』のせいってことで。
あとは単純にルーミーのデレ化(人間化)が著しいのが嬉しい。膝枕、目線の先にはダブルマウンテン。男のロマンの塊じゃないか。なんて羨ましいんだ。
今回もロマンたっぷりでどうしようもなく愛の物語だった。この台詞回しと雰囲気が大好きだ。